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haunted world   作者: ぞえ
溝島ショッピングモール編
25/42

第二十四話 裏切り

遅くなりました




「くそぉ!」

「どうなってやがる!」


 三階から銃声と叫び声が聞こえて来た。


「加勢します!」


 佐治はエスカレーターから狙撃し、進哉と天音がゾンビを叩き潰す。


「すまん。奴ら、エレベーターからいきなり現れたんだ」

「エレベーター?確か、中には奴らがたくさんいるからって、制御ルームでエレベーターはロックがかかっていたはずなのに・・・」

「木島先輩!今は奴らを!」

「ああ、分かってる!」


 その後、佐治、進哉、天音の奮闘により三階での被害は少なくて済んだが、戦闘に夢中になって、二階の騒動が分からなかった。


「た、助けてぇぇぇぇ!」


 二階から悲鳴が聞こえる。


「何が・・・・なっ!どうして二階に奴らがいるんだ。あのバリケードは感染者ごときに突破されるはずは・・・」

「アアアア・・・ア・アア・ア・ア!」

「くっ!」


 戦闘音が聞こえた為、すぐさま二階へと移動した。そこは惨劇だった。感染者が次々に一階から溢れ出て来る。

 しかし、決して少ない人数が二階はいたはずだった。なのに、ここまでの侵入を許したのは武器によるものが大きかった。

 警察署から手に入れた銃の威力は確かに凄い。感染者を遠くから倒すことが出来る。それはいい。だが、頭部を狙うのはかなり強い難しい。

 しかも銃を扱いたての一般市民である。

 普通に考えてあまり当たれるわけがなかった。その間にも接近を許し、パニックになり襲われる。

 そんな感じの状態が続いていた。残っている社会人の数は五人といない。その五人も銃を捨てて近接器武器に切り替える。

 佐治達が撤退を援護するが、三階に辿り着くまでには二人になっていた。

 

「バリケードを!」

 

 三階にあった家具を使ってエスカレーターを塞ぐ。これで一応何とかはなったのかもしれない。

 皆身心共に疲れていた。四階、三階に持ち運んだ食料は多くはない。前提として一階は安全地帯となっていた。だから、食料は各階に運ぶことはなかった。しかし、こうなってしまった以上食糧問題は回避出来ることではない。更に言えば外に出るにも二階、一階を突破しなければ出入口に到達することも出来ないのである。

 更に言えば社会人グループは太田さんとさっきの生存者を含めて三人、それと大学生グループと学生グループしかいなかった。

 

「これより、班を二つに分ける。A班とB班だ。A班は残った我々社会人と大学生。B班は学生グループだ。B班は三階バリケードで音を鳴らして感染者の注意を引く。その隙にA班がエレベーターで二階に行き、バリケードでエスカレーターを塞いだのち、三階バリケード付近の感染者を掃討。一階のバリケードが破壊されている今、感染者はうようよここに入り込んでいる。バリケードを優先してくれ」


 全員コクリと頷く。作戦自体何か異論はないようだ。

 

「作戦は手はず通りだ。大多数の感染者が引っ掛かったのを確認次第エレベーターからいく」


 佐治達、つまりA班は箱や棒で音を鳴らした。すると、感染者達がバリケードに押し寄せる。数こそあるが、エスカレーターは狭いのでバリケードが破壊されることはまずないだろう。


「来ました」

「よし!」

 

 佐治が合図してA班がエレベーターで二階へ降りた。このまま何もなければいいのだが。と、誰もが思った矢先、佐治の体がグラッと揺れた。

 

「あっれ・・・?」


 同時に佐治は後頭部に激しい痛みも感じた。

 

「・・・てめぇ」


 見れば中島がパイプで佐治を殴ったようだ。


「何をする?」

「はっ、お前らが悪いんだ。全部!」


 もう一度佐治に向かってパイプを振り下ろしたが、間に進哉が入って持っていた椅子でガードした。


「おい!進哉!今、こっちに来るなら見逃してやってもいい!」

「先輩、悪いけどあんたらのやり方は気に食わない」

「ああんっ!」


 中島は進哉の腹部を蹴りつけ、押し退けた。


「遥ぁぁぁっ!」


 近くにいた遥の腕を中島が掴もうとするが、倉橋が間に入って中島を投げ飛ばした。中島は家具の山に飛ばされてしまった。


「くそっ!」

「倉橋の戦闘力を見誤ったな・・・」

「村本ぉ!」

 

中島がそう叫んだ。すると、村本が右手に拳銃を持ち、倉橋に向けた。


「村本君!」

「悪いな、倉橋・・・あいつが悪いんだ。あいつが俺にこうさせたんだ」

「あいつって・・・」


 当たらないと分かっていても銃の威力はバカに出来ない。万が一に体に当たってしまうということを考えると、彼女は動くことが出来なかった。

 天音に頼ろうとも、天音はその戦闘力が認められてA班と一緒に二階にいるのだ。

 戦闘音も大きく、三階の騒ぎなど気づいていなかもしれなかった。

 唯一この状況を打破できるのは佐治だった。彼の手にはライフルがあったが、どうにもスコープを見ないで撃つのは厳しいだろう。

 見て撃ったとしても村本が代わりに倉橋を撃つだろう。

 少ない時間であれ、佐治は倉橋に情が移ったのか。それは分からないが、そんなことは出来なかった。


「全くよぉ!」


 中島が起き上がって佐治の腹部に蹴りを入れた。

 倒れて腹部を抑える。


「がっ・・は・は・・・・てめぇ」

「んだよ、その目は!」

「っ!」


 更に二回腹部を蹴って来た。


「中島、俺は作戦通りに行く」

「ああ」

「あなた達何をするつもり!」


 倉橋が叫んだ。

 すると、下の階から声が来た。


「B班!速く援護に来てくれて!予想以上に感染者の数が多い!」


 そう太田さんの声が聞こえた。

 

「作戦はエレベーターの動力を切る。バリケードは下の階から壊すことは出来ない以上、エレベーターを失ってしまえば邪魔者は消える」

「そんな・・・・」

「まぁ、あの天音とかいう女はいい女だったが、仕方ない。心配するな、下から声が聞こえなくなったらお前らは同じようにしてやる。遥、お前はこっちに来るよな?」

 

 倉橋の友人である遥はビクッと反応させた。


「わ、私は・・・」

 

 遥は倉橋を見た。再会出来た友が危機的状況に陥っている。少なくとも、自分が彼らの側につけば自分は死なずに済むだろう。

 しかし、それは誰も望まない。


「遥・・・あなたがどんな選択をしても、私は遥を恨まない」

「有紗・・・ありがとう。村本君!中島君!私はあなた達がやっていることはいいことじゃない!だから、私はあなた達について行けません!」

「ちっ!倉橋!お前がこっちにくれば遥も助けてやる。どうだ?」


 中島が倉橋の目の前にまで来て拳銃を額に向けた。


「拒めば・・・分かるよな?」


 村本が遥や佐治達に銃を向けた。

 

「・・・・・・・私は」

「おっと、先輩。これまでですよ」

「ああん?進哉?お前、俺らの邪魔しようっていうのか?」


 進哉は手を広げて倉橋の前に立つ。


「俺は俺の信念を貫くだけです。例えここで死ぬことになっても、俺のために手を差し伸べた人達を俺は裏切ることが出来ない。だから、俺ははっきりと言う」


 進哉は大きな声で言った。


「あんたらは間違ってる!」


 彼が生まれて来てから今までの時間の中で経験して、得たものだった。他に流されず、自分自身の答えと信念を持ち、どんな相手にもはっきりと言える。

 中島や村本は進哉のことを後輩、下に見ていたが、彼のこの答えに少なからず脅威を感じた。

 だから、早急に始末する必要があった。


「じゃぁ、死ねよ!」


 中島が言った。







ありがとうございました。

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