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haunted world   作者: ぞえ
溝島ショッピングモール編
24/42

第二十三話 予兆




「やめてっ!」


 倉橋は中島の手を払い退けた。武術の達人である倉橋にとって中島など恐れる訳ではないが、やはり仲良くしていた同級生とだけにあって、それなりに力は出ないでいた。


「いいじゃねーか?」

「言い訳ない!今がどんな状況だって分かってるの?」

「こういう状況だからこそだよ」


 四日間も閉鎖された空間。外には歩く死体。更に隣には美少女。

 元から倉橋を狙っていた中島にとってはとてもじゃないが、我慢できる状況ではなかった。

 そして、中島は強引に倉橋を壁に押し付ける。

 その手が胸に掴んだ瞬間、中島は宙に浮いた。次の瞬間には中島は転がっていた。


「っ!」

「今のは手加減しただけだから」

「倉橋てめぇ・・・」


 倉橋は拳を構える。


「中島君・・・私は戦うって決めたから」


 そう言って、倉橋はその場から歩き出す。

 彼女自身、中島がこんなことをするなんて思っていなかったが、踏ん切りをつけた今、彼女は誰とでも戦うと決めたのであった。

 例え仲間だとしても。


 中島は倒れたまま、その背中を見て呟いた。


「あのクソアマ・・・・そんなに戦いたいなら、いいぜ。俺が作ってやろうじゃねーか」







「そんなことが・・・」

「うん、村本君。どうしよ」


 その後、倉橋は村本に報告した。

 村本は真剣にその話を聞いていた。


「何だか、怖い・・・ここなら安全だと思っていたんだけど、正直・・・」

「息苦しい?」

「うん、何か・・こう。村本君と同じ、息苦しさを感じるの・・」

「まぁ、仕方ない・・・これが生き残る方法なんだから・・・けど、いるから」


 村本は倉橋の手を握った。


「あ、うん。ありがと・・・」


 が、倉橋はその手を払い抜けた。


「ごめん・・・」

「いや、いいんだ・・・真鍋のことだよな?」

「えっ、いや・・・そう言う訳じゃないんだけど・・・」

「悪い、変なことして・・・」


 そう言って村本は歩き出した。

 

「クソ・・・あいつが・・・あいつが・・・」


 村本は倉橋が見えなくなったところで、そうブツブツと呟くのであった。

 

 そして、事件が起きたのが昼過ぎであった。

 警備にいた田中が初めにそれを確認した。


「なっ、なんで一階に感染者がっ!」


 田中は走って太田に現状を知らせた。それを知った太田は男性陣を集めて、二階のエスカレーターで防衛線を張った。

 エスカレーターの幅は狭くて、更にこちらは銃火器を手に入れたおかげでいい的であった。一方的な攻撃をしている訳だが、どうにも数が多い。


「奴ら程度の力でもシャッターは突破出来ないのに・・・」


 進哉がバリケード用の机を運びながらそう言った。

 

「原因は分からんが・・・」

 

 佐治はさっと後ろを見る。

 後ろでは中島がニヤニヤしている。隠そうとはしているが、佐治から見ればお見通しであった。


「だが、気をつけろ」

「はい?」

「敵は感染者だけじゃない」

「・・・・はい」


 その言葉の意味を知ったのか、進哉は静かに返事をした。

 エスカレーターにバリケードが設置されてたおかげで、感染者の攻撃もひと段落は終了していた。


「くそっ、どうなってんだよ!」

「どっかに抜け道でもあったのか?」

「はぁ・・・安全圏だったのに・・」

「ちくしょう・・・」

「一階に奴らがいるなら食料確保も難しいな」


 と、各自思うことを次々に吐き出していく。

 それも当然だ。

 つい先程までここは絶対安全だと思っていたのに、ものの数秒で死と隣合わせになってしまった。

 最悪である。

 

「兎に角、ここは交替で見張りましょう。先に学生グループが休んでください。取り合えずは、一時間後にでも」


 太田さんがそう提案して来た。

 まずは休息。体力を回復させないと、次の行動もなったもんじゃない。

 その案に乗っかり、佐治と進哉。天音は五階に戻り始めた。村本、中島、倉橋、遥は三階である。

 

「はぁ・・・まずは一段落」

「蓮太郎先輩がいれば・・・」

「まぁ、二人とも。これで分かったんじゃない?」


 天音が二人に声をかけた。


「まぁ、あいつなら、もっといいこと考えたんだろうな」

「死んでません。先輩は、絶対に・・・」

「うん、速く来てくれないかな・・・」


 と、しているのも束の間。


「大変だぁ!」


 下の階から田中が叫びながら走って来た。


「どうしたんですか?」

「感染者が・・・・奴らが三階にも現れたんだ!」


 一難去ってまた一難。

 佐治達は三階へ駆けだした。


次回もよろしくお願いします。

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