第二十二話 日記
速くショッピングモールへ帰るべきなのだろうが、俺はどうにもこの扉が気になった。
「お・・・おおおお・・・朝か」
大きなあくびをしながらソファーからおりる。朝食は缶詰で済ませ、柔軟運動を少しして行動を開始した。
あの鍵を扉の鍵穴に差し込む。
カチ
「うん、合ってる」
ギィィィと吸懲り重い扉を押すと、中の部屋は暗く何も見えなかった。俺は持っていた懐中電灯で部屋を照らしたが、特に興味を示すものはなかった。
しかし、一つ机があり、そこに一冊の本が置いてあった。
「・・・・・・・本?」
ペラペラとめくるとどうやら日誌のようだ。
ここでは暗くて読めないため、俺はリビングに戻り、日誌を読み始めた。
○月○日
今日は依然から研究が進んでいたウイルスについてのプレゼンテーションが行われる日である。この企業の創設者としては参加しなければならない。内容はとても興味の湧くものだ。詳細は記さないが、楽しそうである。
○月○日
先日のウイルスについて早速研究が開始された。私はこの研究の第一人者として研究に参加した。スタッフは社長の私が自ら赴く事に驚いていたが、この先、世界の命運を決めるウイルスについて私がいることは何ら不思議なことではないと説明した。
○月○日
ウイルス研究については成功した。
長かった。十年だ。十年におよぶ研究が私の願いを成就させた。それにしてもこの日記に記すのは長い間空いていた。
二日書いたが、その次が十年後とは、我ながら笑える。
こんなものは日記ではないが、少しばかり最近のことについて書き記しておこう。
私はこの世界を改革したいと思っている。近々アメリカに本社を移動することになっている。私もそちらに移動するが、研究の最終段階については日本支部で研究を見守ることにしている。
その最後の研究については幾つかの大事なことであった。
孫娘のことである。
家族にはこの研究について、私が社長であるということは当然ながら黙っている。仕方なく今は老人のフリをしているが、研究が開始と同時に私が消える。
恐らく息子夫婦は死んでしまうかもしれない。だが、これも改革に必要な一つのことである。
胸が痛い。
だが、彼らよりも孫娘には生きていて欲しい。
改革後、私達が支配する世界で生きていて欲しいのだ。それまで、世界が改革化されるまで、生きる術を全て教えた。
日に日に孫娘は腕を上げ、高校二年になるころにはかなり強くなっていた。私でも手におえない。
だが、これで全て準備が整った。
長い間待ち望んだ、世界が終わる日。同時に新たに始まる日。
この日記に記すことはここまでだ。この老いた身でどこまでやれるかどうか分からないが、人が生まれ変わる日が直ぐそこだというのを言っておく。
もしも。
世界が終わってこの日記を見つけたものがいるなら、君は二つに一つの選択をするがいい。
終わった世界で生き続けるか、私達の思惑を破壊するか。
全て私のシナリオ通りに進んでいる。
イレギェラーは認めない。
だが、仮に君が私と戦うといのなら、認めよう。
「なんじゃこりゃ・・・」
長いのか、短い日誌を閉じて俺はそう言った。
もしもこの日誌に書かれていることが本当なら、ウイルスをばら撒いた連中はこの倉橋家の爺さんということである。
しかも孫娘というのは有紗のことではないだろうか?
なら、あの対人戦闘力、頷ける。
「・・・・・・」
私達の思惑を破壊するか。
「んなもん、知らねーよ」
ショッピングモールへ戻るべく、俺は一人。倉橋家を後にした。
夏のイベントに向けて資材集めてるんですけど、ポーキが何故か集まらない。くそぉ。
今回もありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。




