第十八話 戦うということ
ありがとうございますww
「感染者は音に反応するから、不意打ちと数に気をつければそれほど脅威にはならないの。本当の敵は感染者ではないから・・・」
俺の隣でそう呟くのは、突撃銃を片手に佇む天音さんだった。
「え?武器確保?」
「そうそう、警察署もあるし。そこまで銃と弾を取りに行くんだよ。それに、鉄砲店もある」
昼食時、俺達は太田さんからそんなことを言われた。死の危険がある為、強制ではないようだが、丁度いい機会だ。
ここじゃ、少しばかり退屈だ。安全なのはいいのだが・・・。
「分かりました。出発はいつ?」
「ああ、一時間後。午後一時に出発しようと思う。時間になったら各自武装して一階に集合してくれ」
「了解した」
俺達は五階に戻る。
「あいつらの狙いはやっぱ銃か。ベレッタとか没収されるよな。ほれ、蓮太郎。もしもの時に使え。使い方は分かるよな?」
「ああ、昨日聞いた通りでいいんだよな?」
「それにしても、天音さんの鞄には何が入っているんだ?」
「・・・・・・まぁ、そのうち」
「んだよそれ」
俺は金属バットを。佐治は木刀。進哉は鉄パイプをそれぞれ片手に持つ。
「進哉、お前ここに来るまでどれくらい戦闘した?」
「そうですね・・・学校で二回。たどり着くまでに五、六回ぐらいは戦いましたね」
「そうか・・・」
「どうしました?先輩?」
エスカレーターを降りる時、俺は進哉にそんな質問をした。
「少なくとも、俺達は今から戦いにいくんだ。余計な戦闘はしないにしろ、俺にはそれなりの覚悟を決めた。進哉、お前もそれは肝に銘じておけ」
「は、はい・・・・」
一階に下りると社会人四人。赤城さん、村本、中島、天音さん、そして俺達三人。計十二人が集まった。
「天音さん、やはり女性が来るべきじゃないと思う」
と、村本。
くそ、ここまで来ても他人の行動を制限しようと言うのか?
しかし、天音さんはそれに従うこともなく、
「大丈夫。私が、強いですから」
「・・・・なら、僕と一緒にいてくれ。前に出ないで」
「えっと・・・」
彼女は微妙な表情をしながらこちらを見るが、俺はやれやれと首を振った。あれを素でやっているのか、それとも計算してやっているのか分からんが、恐ろしい奴だ。
てか、まぁイケメンだから大抵の女は皆コロッといっちゃのだがな。しかし、天音さんは顔で男を選ぶのではなかった。
「よし、車に全員乗れ!」
ワゴンと乗用車に二手に別れ乗り込む。乗用車に俺と、佐治、進哉が乗り込む。運転者は赤城さん。助手席に天音さんが乗ろうとするが、村本がそれを強引引き止め、ワゴンに乗せる。代わりに男の人が一人乗った。
面識は・・・ないな。
「それよりも、シャッターの直ぐ目の前は感染者だらけなんじゃないのか?」
誰かに問い掛けると言う訳もでないが、俺はそんなことを言った。もしそうなのだとすれば、とても乗用車とワゴンで抜けれる訳がない。
それに答えたのは赤城さんだった。
「大丈夫さ。今、反対側で屋上の上から音のなるような物で奴らを集めてるのさ。爆竹とかね」
なるほど。そうして、感染者が入り口と反対側に集中している間に、俺達が飛び出すと。うん、いいアイデアだ。
「皆、準備はいいか?」
各自それに返答する。
「いいぞ!」
シャッターが上へと上がる。目の前には・・奴らはいない。
「行くぜ!」
赤城さんが勢いよくアクセルを踏み、車は飛び出した。事前に知らされていたルートをそのまま走り出す。
感染者は大した数はおらず、いても撥ね飛ばしていた。
エンジン音に近づいて来るが、どいつもこいつも遅いので、俺達は特にこれといった被害は受けず、警察署に辿り着いた。
「それじゃ、Bチームはここで待機。Aチームは中に入って物資を運ぶぞ」
俺らはここで待機か。まぁ、いいけど。
「だったら、天音さんはここで待ってて下さいね。俺らが武器調達して来るんで」
「は、はぁ・・・」
そう言って村本は俺らに向かって歩いて来た。
「お前らが天音さんとどういう関係なのかは知らないが、女性を戦わせるようなことはさせるなよ?」
そう言ってイケメンは歩き出した。
「なぁ、佐治」
「何だ?」
「一つ、聞いていいか?」
「これに参加した奴は戦闘目的だよな?」
「はは、奴は女性に戦ってほしくないんだろうな」
「はぁ・・・」
少し怒った感じの天音さんがこちらに歩いて来た。
「ホント、何あれ?」
「まぁなんつーの。あいつなりの気遣い?」
「そんな気遣い、私にはいらないんだけどなー」
後ろで手を組み、頬を膨らませる。
プッ
バッ!
「え、何?」
「今、笑ったでしょ?」
と、頬を膨らませて俺を見る。
「いや、んなことないぜ・・・・」
ジー・・・。
「はいはい、俺の負け。なんつーの?天音さんが、ちょっと・・・」
「ちょっと・・・?」
「起こるかもしれないけど・・・何か、子供っぽくて。普通に可愛かったと言うか・・・なんというか・・・・」
あー、何言ってんだろ俺。アホか。
「な、何言ってんの!」
ベシッと顔を赤くした天音さんが俺の頭をチョップして来たが、何故だかその行動さえも可愛く見えた。
本当は二十二歳なんだけどな。
俺よりも四歳も上なんだなんて、信じられないが・・・いいじゃないか。
お姉さんって感じで・・・。
「さてと・・・暇だ」
感染者は今はこの通りにはいない。
それが暇なのだ。安全なのは良いこと。だが、俺はここに少なくとも感染者どもを殺すためにここにいる。戦うということを知るために・・・。
この天音という人物にあって俺は心底それを思うようになった。
隣で空を見ている彼女を見ていると、俺は少しだけ、憧れに似た感情も持っていた。彼女が強いのは会ったときから・・・感じていた。
そして、時が動き出す。
「ば、化け物だぁぁぁぁぁぁぁ!」
それは戦いの権化にも似た叫びだった。
個人的にはあれですね。もうちょい、一話を長く書きたいですね。次回もよろしくお願いしますww