047:金髪ゴスロリ美少女アーニャ
あれから俺に接触してくる変な奴らは特に無く、月が変わって8月になった。
相変わらず蒸し暑くて嫌な季節だ。
いや、子供の頃から夏休みは日が長くて色んなイベントがあって大好きだったはずなのに、 何で嫌な季節だなんて思ってしまったんだろう?
そんな事を考えながら日課になってるリハビリのための散歩をしていると、突然後ろから声を掛けられた。
そう言えば索敵スキルを忘れているなんて、どうしたんだ最近の俺は……
聞き覚えのある声に振り向いてみると、そこには金髪のロリ美少女が相変わらず暑いのにゴスロリファッションで立っていた。
「ねぇ、暑くて喉が渇いたわ」
「ぷっ… 」
第一声がいきなりの要求、だがあの時の彼女のイメージそのままの、可愛い我が儘な言い種に吹き出してしまいそうになった。
「ちょっと、私の顔を見たとたんに吹き出すなんて失礼じゃないの!」
ゴスロリ美少女はいきなり俺に吹き出されて、ご機嫌斜めのご様子だ。
ヤバいヤバい、小さな美少女のプライドを傷つけてしまったのかもしれない。
「ごめんごめん、なんかイメージ通りの台詞だったからさ」
「イメージって、私は和也にどんな目で見られてたのよ?」
「そうだなぁ、君は我が儘いっぱいな金髪ロリ美少女って処かな… 」
わざとらしく、少し首を傾げながら言う俺の返事は相当気に入らなかったのだろう、彼女は俺を見つめたまま不満そうに呟いた。
「アーニャ!… 名前で呼んでって言ったでしょ」
相当ご立腹のようだ、まずいねこりゃ、そう言えば名前で呼べと言われた気がする。
「ゴメンゴメン、アーニャ、久しぶりだね」
「なんで日本の夏はこんなに暑苦しいの、冗談じゃ無いわよ!」
「おいおい、俺にそんな苦情を言われても天気はどうにもならないぞ」
完全にとばっちりと言うか、それは流石に俺への八つ当たりだろう。
「ふん、ちょっとくらい涼しくしてくれたって良いじゃ無いのよ」
「いや、いくら我が儘アーニャとしても、それは無理な要求でしょ」
「誰が我が儘なのよ!、あたしは喉が渇いたって言ったの!、和也が何か冷たい物でも奢りなさいよ」
「ちょっ、奢り決定かよ」
「あたしみたいな美少女をエスコートできるんだから当然でしょ、ありがたく思いなさい」
腕組みをしながら踏ん反り返っている金髪ゴスロリ美少女とそんな遣り取りをしていると、 あれほど鬱だった気持ちが不思議と晴れてくる気がして、俺は何か奢ってやっても良いかなと思い始めていた。
我が儘放題されても、不思議と腹も立たないのは得なキャラだよな、アーニャ!。
「判った、ご要望通りに何か冷たい物でも奢りましょうか?」
そんな俺の返事では合格点は貰えなかったらしく、金髪ゴスロリ美少女は不機嫌なままだった。
「なによ、それじゃ私が無理矢理お強請りしたみたいじゃないの、ほんとスマートじゃないのね和也は」
いや、間違い無く要求してただろ、それも力一杯などと内心で突っ込みを入れつつ俺は即言い直した。
「よし、じゃお兄さんが可愛いアーニャに冷たい物でも奢ってあげよう、ご一緒してれるかな?」
「仕方ないわね、ちょっと喉も渇いたし付き合ってあげてもよくってよ」
言うに事欠いて、仕方なくかよ!
まったく面白い子だ、久しぶりに笑ったような気がする。
「じゃ、どこかファミレスでも…… 」
「え~っ、ファミレスなのぉ~」
「なんだよ不満かよ、贅沢な奴だな」
(こいつ、小さくても女なんだな)と、そんな感想が頭に浮かぶ。
まあ、こいつと話していると気が紛れて面白いけど……
「女の子を連れてファミレスは無いでしょ、あなた絶対にモテナイ君よね」
「高校生の小遣いで背伸びしてどうするんだよ、身分相応って言うんだよ」
アーニャは、ちょっと考えてからファミレス行きを渋々承諾した。
「良いわ、その代わりスイーツ付きで妥協してあげるわよ」
「ぉいぉい、要求増えてるじゃん」
「もうっ、暑苦しい日本が悪いのよ、さっさと行くわよ」
アーニャは、ずんずんと俺を先導して近くのファミレスへと入っていった。
なんか久しぶりに楽しいかもしれないと、俺はそう思ってアーニャを追いかけてファミレスのドアを開けて中へと入っていった。
なんかアーニャとは相性が良いのか不思議と腹が立たないし、思った事が言えるし反応が面白いから、ついつい突っ込みたくなってしまうのだ。
ドタバタとした騒ぎで俺は、突然アーニャが目の前に現れた意味を深く考える事ができなかった。
寧ろ、俺はアーニャとの会話を楽しみにさえしていたのだ。




