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衝突事故から、約三分後・・・・・・規神さんという偽名な彼女は青年の目の前に来た。
散っている頭部を見下げている彼女は笑みを零しながら両手で、青年の頭だけ、持ち上げる。
青年はもちろん、気付いていない。むしろ、死んでいる。
だが、規神さんは、死んでいる青年に対して静かに言うのである。
狂いながら。
「・・・あっは!! 血はどうして赤なのだろう。涙はどうして透明なのだろう。人間はどうして生きているのだろう。解からない、だけれども解かる。私は矛盾を言う。私は君に言う。あっは」
「・・・・・・・」
青年は死んでいる。
「どうして君は舗装されている道路に寝転がってまるで死にたい顔で、死、を待っていたのだろう。解からない、だけれども解かる。私は矛盾を言う。私は君に言う」
血が飛び散っている道路で彼女の自動車は人間の血によって染まっている。
深夜の二時。
規神さんは零していた笑みを、笑う。
「あっはっははははははあはっははははははははははははっははははっはははははははははははははっはははははははっははははっはっはははっはは」
滅多に自動車が通らない道路で一人佇んで、彼女、は青年の毛髪を握る。
持ち上がる顔面。
そして重力のまま落下する頭。
ぶらんぶらん。
「はっは・・・」
星は出ていない。
月が出ていない。
雲によって隠れている。
そんな曇っている暗雲なそらを見上げる規神さんは右手で掴んでいる毛髪・・・頭を投げた。
高く。高く。
まるでボールのように何回も、青年の頭、を彼女は投げる。
「自殺志願者の頭を投げる私っていささか逸しているのかな? 逸しているね。でも私はやめない。だって、人間は不思議なことに対して欲求不満であるもの、あっは。人は死ぬ。あーでも、人は死に急ぐ、甘い、甘甘甘ね。私は君を轢いた。トマトみたいな感覚で君を跳ね飛ばした。あっは・・・笑える。そして貴方は呪われている。解からないことだけれども解かることで私は矛盾を言い私は君を呪う。私と対等な世界で生きて行きましょう。・・・・・・逸している世界へようこそ。功真考君」
投げ終えた頭は、また、規神さんの両手に収まる。
そして、そのまま規神さんは顔を近づけ。
唇と唇が重なり合う。
約一分間。
キスする二人。
僕は目覚める。
目覚めると僕は誰かとキスをしていた。
夢? なんて思ってしまうほどの気持ちよすぎる、キス。
そして動かそうと思った体への反応が無い。
何故 無い?
回想。
・・・・・自殺を図った・・・轢かれた・・・・・・原因・・・イジメ・・・・・人間関係・・・・家族関係・・・山ほど存在する原因。
そして痛い思いをした死んだときの恐怖。
思い出す。
死んだ? あー僕死んだ。・・・あれ、でもなんで僕は生きているんだろう? 解からない、だけれども解かる。僕は矛盾を言う。僕は彼女に言う。うん? なんだコレ? ・・・僕の口癖じゃない・・・・・・・勝手に出てきた口癖・・・はて? 見覚えが無い・・・そして見覚えが無い大人の女性・・・・・・僕はどうしてキスをしている?
僕が目覚めて約一分間。
キスは終らなかった。