俊太と義和の日常
「うわぁ〜アチィ・・・・・そして・・・・・だるぅ・・・・」
「五月蝿いな。もうちょっと静かにできないんですか?まったく・・・・ブツブツ・・」
2人の少年が呟きながら路地を歩く。
1人は夏用の制服、とでもいうのであろうか、半袖のカッターシャツである。そしてその少年は悪態を付きながら喧騒の中を背を丸めて歩く。この少年 桂木 俊太という。
そしてもう1人の少年は夏の暑い日にブレザーを着て、丁寧にネクタイまでしている。この少年は1人黙々と隣の俊太を無視し、本を片手に俊太と並んで歩いている。この少年は 松墨 義和 (まつすみ よしかず)という。
そして2人が歩いているのは花蜂市倉井町の『THE 商店街』の中だ。
『THE 商店街』はその名の通り商店街である。
ただ少し賑やか過ぎる商店街である。
今日もまたその賑やか過ぎる商店街の影響が、花蜂市立中学校に通う2人の少年にいつものように訪れる。
「あぁ・・・・このデッドヒート寸前の暑さ、どうにかなんねぇかなぁ・・・・・ブッ!」
「ん?どうしたんです・・・ブッ!」
俊太の奇妙な声を不思議に思い、義和は振り向くと行き成り顔面にケーキが飛んできた。
「てめぇ!何しやがんだ!」
「うるせぇ!出てけ!神聖な西洋の空気が穢れる!」
「あぁ!?てめぇみたいなチャラ男が何言ってんだ!」
俊太は怒鳴り声の方向へケーキの付いた顔を向ける。そこには元ヤクザ組長の魚屋のオッサン(辰夫)と、元刑事のケーキ屋のオッサン(勝司)がいた。
「なんでテメェの為に道どかなねぇといけねぇんだよ!」
辰夫が日本刀を振り回しながら怒鳴る。それに対し勝司は、
「あぁ!?てめぇのほうが格下だからだろうが!」
ケーキ入刀に使うような刀を振り回して応戦する。
その争いの中へ俊太は入っていく。そして、
「テメェら!ウゼェ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
両腕をめいいっぱい広げ、ラリアットで突っ込む。そのラリアットは見事二人の危険人物に直撃する。
「ぐわぁ!」
「うおぉ!」
沈黙する二人。起き上がってこない。そしてその二人にひっそりと近づく、もう1人の影。
「あのですねぇ・・・・・街中で日本刀や長刀のようなものを振り回す大人がどこにいるんですか!いい加減慣れましたが、毎度毎度こうなんで反省の色が見えないんでしょうね!ええ?何故ですか!?こっちは毎度毎度服が甘い匂いがして困ってるんですよ!?日本の大人としての誇りや秩序がないんですか?いい年した大人が爽やかな朝に何してるんですか!?まぁ大体は分かっていますけれどもね!というか、毎回毎回同じじゃないですか!少しは反省しないんですか?しょうもないことで一々キレないでください!」
「お、おい。ヨッシー。もうこいつ等意識飛んでるって・・・・・・・」
「ですがねぇ!」
「おい。時計を見てみなさい。」
「はい?え〜と・・・・・・わひゃ!」
俊太に言われて時計を見た義和は今度は自分が奇妙な声を上げることになった。
「もう8:26じゃないですか!危ないですよ!早く行きましょう俊太!私の・・・・・私の皆勤賞が!」
そう叫んで突然走り出す義和を見送りながら、俊太も遅れながらも追いかける。
このような賑やかな商店街は毎日続いているのである。
「お、おぃ・・・・・俺達は?」
「う、うぅ・・・・・置き去り?」
いつものように取り残される、危険人物2人であった。