病気
「……なんだって。そこでそいつが言ったらしいよ」
「………」
「ねぇ朋美ちゃん。聞いてる?」
「えっ?あ、うん…」
麻美の家で二人は他愛もない会話をしていた。
しかし私はずっと考えていた。
「ねぇ麻美ちゃん。最近体がダルいとか調子が悪いって思ったことない?」
「ううん、なんで?」
「そっか…なんでもない」
私は例の『病気』にかかった人の症状がどんなものなのか気になっていた。
麻美の様子はいつもと変わらない。
「日も暮れてきたし、そろそろ帰るね」
「うん、またね。バイバイ」
帰りに本屋によって病気の本を何冊か調べてみた。
しかし病名すらわからないので調べようがなかった。
とりあえず適当に何冊か買って家に帰った。
「ただいま」
「………」
私は自分の部屋へ行き、さっそく買ってきた本を読み始めた。
しばらく読んでいると例の病気と似たような症状が書かれている病名があった。
『ウィルス性生間腐敗症』
詳しく読んでみると、生きたまま体の『内部』が腐っていくらしい。
外側の皮膚などは腐らず、外見からは全くわからないのだ。
しかしほうっておくと突然死に至り、外側などもすぐに腐り始めるというのだ。
このウィルスは生きている人間からは感染せず、この病気で死んだ人間に触れるとたちまち感染すると言う。
そして驚いたのが、あくまで体の内部が腐り、外側が腐るわけでは無いので異臭を放つことは無いと書かれていたことだった。
この匂いは病気のせいでは無かったのだ。
私はそこで本を読むのをやめてしまった。
途中で読むのをやめずに最後まで読めばまだ救いようがあったとは、この時はまだ知る余地も無かった。
結局この異臭の原因はわからずじまい。
私は周りの人間が病気というわけでは無いことに安心したが、どこか腑に落ちない感覚でいた。
その時突然携帯が鳴った。
「もしもし、おじさんだけど今からいいかな?」
しばらくぶりにかかってきた。
生活費も少なくなってきたので私は了承した。
家の前におじさんの車が来た。その車に乗りおじさんの家へと向かう。
おじさんの家に到着し、いつもの行為を終えるとおじさんが言った。
「朋美ちゃん、今日はいやらいし香りがするね」
「…?」
いやらいし香りとは一体何だろうか?
変態の考えることは理解出来ないものだったが、この言葉が妙に気になったのを覚えている。
いつも通りおじさんから5万円を受け取り家に送ってもらった。
「ただいま」
「………」
「ねぇお母さん、私からなんか匂いする?」
「……何も匂わないわよ」
私は安心し、その夜は眠りについた。