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グリーンピース王国の野望  作者: モアイは語る
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グリーンピース王国の日常

「敵だー!! 各自持ち場から離れるなよ!」


 団長の声が城中に鳴り響く。


「きゅあjふいhgんbyhg!!!!!!!!!!!!!!」


 城の上空から無機質でありながら轟音ともいえる金切り声が絶え間なく聞こえている。


「くそっ、何なんだあの音は」


 次第に大きくなっていく音に苛立ちを抑えながら、団長は階段を駆け下りる。

 苛立ちながらやっと、団長が町に出ると生物として“ありえない形”をしている異形の生物が町を破壊していた


「これはいったい・・・?」


 こんな魔物の形状は今まで見たことがない。

 頭は人のような形をしているが、胴体は内側に反り返り、腕は布のように薄く、足はクラゲのように何本もある。

 それでいて所々金属のようなものでおおわれている


「おかしい・・・やつらあんな形状をしていなかったはずだが?」

「もしかしてやつら進化し」

 そういった団長の背中からあるものが突き出した

「っ!!!!」

 そう・・・・生物とも機械ともいえない化け物の腕であった


「ありえない!これが進化した****の力だというのか!?」


 まさに一撃、一撃でこの国最強と謡われる最強の兵士がやられたのだ

他の者になすすべなどありはしない

 団長を殺した異形の生物は


「いやーー!!」


また一人


「た、たすけてくれー!」


また一人と町の人々を殺していった。




「ふははははは!野菜などこうしてくれるわ!」


「やめなさい」


「あべしっ」





 グリーンピース王国フリューゲル辺境伯領。その中心、フリューゲル辺境伯の屋敷にて、大きな溜め息をついた者達がいた。メイド長と料理長、そして、フリューゲル辺境伯である。


「はぁ、坊っちゃんの野菜嫌いはどうにかならんものですかな」


 心底疲れきった声音で料理長が呟いた。


「無理、でしょうね」


「むしろ矯正できるのか?」


メイド長と辺境伯は既に諦めているのか、机の上の用紙を見ようともしていない。


「二人とも、さすがにそれはヤル気無さすぎですよ……私だって……うぅ」


 ついに料理長は泣き出した。

 ここらで容姿の説明をしておこう。

 メイド長は、艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、お下げにしている。そんな髪にも負けず劣らず顔もスタイルも良い。切れ長な目、スッと通った鼻筋、少し薄いが魅力的な唇。クール系美人の理想像ねような女性だ。


 辺境伯は少し年の行った漢であった。鋭い眼光に頬を通る傷痕、適度に刈られた髭。まさに騎士を体現した男であった。

 料理長も負けてはいない。

 辺境伯に負けない程鋭い眼光に、太陽を反射する頂点。濃いめの体毛が怖さを倍増させる、どこのアウトローな人間だ!といいたくなる容姿であった。

 だが、思い出してほしい。そんな男は会議室で何をしていたのか。

 泣いていたのだ。

 ついでいうとメイド長は爪をいじりだし、辺境伯はもうやだと遠い目をしている。

 第三者代表で言わせていただきたい。

 なんだこのカオスな空間。


 そんな彼らは、なぜ話し合いをしているのか。

 それは、坊っちゃん曰くムラリン・フリューゲル・ロユキのあまりの野菜嫌いを解決するため会議とは名ばかりの、愚痴会をしているからだ。


 今回で二桁を超えた会議は、もはや解決策の話し合いなどの問題ではなく、ただの無法地帯であった。


「ふぅ、料理長よ。今回はどんな有り様であったのだ?」


 料理長が泣き出してから大分経った頃だ、やっと会議が始まった。

 だが、椅子に料理長の姿はなく、椅子の後ろに三角座りで俯いていた。彼は、自分の手に正の字を書きながら「僕は間違っていない」とボソボソ呟いていのだ。料理長よ怖すぎるぞ。


「…………あ、はい。今回は」


 やっと始まった会議に喜んだ料理長はパッと笑顔を咲かせ、椅子に座って話始めた。が、どんどん顔色が悪くなり、(しま)いには、また椅子の後ろに三角座りをし始めた。

「料理長よ。一体どうしたと言うのだ。我らに話してみよ、自分一人で抱えるより幾分か楽になるぞ」

 優しい言葉に、料理長も覚悟を決めた顔でぽつぽつと語りだした。


 話始める前にメイド長は静かに耳をふさいだ。

「今回は……ですね。あのぅ、野菜たちを擬人化させまして。ついでにフォークを魔改造されまして、ええ。パンを城に見立て、フォークで野菜たちを……」


 これです、うぅ。と、魔改造されたフォークを料理長は机の上に出した。キュルキュルと嫌な鳴き声をあげるそのフォークはもはやフォークではなかった。


「魔侯爵に調べてもらったところ、これ一本で地上を殲滅できる能力だそうです」


 今まで黙っていたメイド長が声を上げた。耳はふさいだままで。


「それが、ニンジンやピーマンを串刺しにグジャグジャに、人の姿なのに、グジャグジャなんですよ……?」


 辺境伯は後悔した。

 その惨状を想像するに、とても凄惨なことだったのはわかる。だが、そんなもの見せられても困る。主に吐き気的な意味合いで。


「そうか……」


 夕食は軽いものにしよう。辺境伯は胸に刻んだ。


「それで、グリーンピースはもっと……」


 詳しく語ろうする料理長を辺境伯は手で制し、椅子から立ち上がった。


「明日は肉だ。明後日も肉だ。野菜はちょっと休止しよう。我らの身が持たん。それでいいな」


「財政は、大丈夫なんでしょうか……?」


「ああ」


 大丈夫じゃない。

 と、言えたらなんと素敵だろうか。しかし、そんなことはできずに辺境伯は頭を縦に振った。


「ばれない程度に大豆を混ぜておけ。その場しのぎだか、少しは負担を減らせる」


 ばれなければいいが、と小声で呟きつつ、辺境伯は自室へ帰っていった。


 自らの部屋に戻った辺境伯は、静かにベッドに向かいポフッと、倒れかかった。


 息子にも困ったものだ。財政というものを少しは考えて欲しいが……そうはいかんだろうな。辺境伯は疲れた様子で思案した。


 (あぁ、そういえば明日までの書類があった。しかし、あっちの書類も期限が近いし、どこを切り詰めるか考えないと……)

 色々考えていた辺境伯だったが、色々考えて、結論がでたようだ。


 寝てしまえ。


 辺境伯は現実を逃避した。


…………がんばれ、辺境伯。

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