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異世界から変な奴が来たので、全力で追い返します  作者: 牧田トリ


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二話 力の差

コツコツと書いていきます。

感想、ぜひよろしくお願いいたします。

「言葉は…理解できますよね?ここは、どこですか?」


赤髪の彼女は俺を見て再度質問した。構えていた包丁は力が抜けて下を向き、ドアノブから右手を離した。


「どこって…ここは、日本だよ」


「…にほん」


彼女は少し視線を下に向け、聞いた言葉をつぶやいた。

呆気にとられた俺は、判断力が鈍った脳でただ単に彼女の質問に返答してしまった。俺は頭をぶんぶんさせ、脳を起こして包丁を握る左手を彼女に向けた。


「あ、あんた空き巣か?空き巣なんだろ!?」


「あ、あきす?」


彼女はぽりぽりと頭を掻き、周りを見渡した。俺の言っている言葉の意味がわからないのだろうか。だが喋っている言語は日本語なはずだから、意味を知らないとは思えない。

ということは、彼女はごまかしているのだろうか?


「なるほど、あんた、そうやって家に侵入したことを誤魔化そうとしているんだろ?」


俺は包丁を握る手の腕を少し伸ばし、彼女に動くなと威嚇した。黄緑色の瞳は俺の持っている包丁を見ると、少し眉をしぼめた。


「私は貴方の家に侵入などしていません。それに、そんなククリみたいなもので私を脅そうとしているのなら、おすすめしません」


「なっ…じゃあどうやってここに入ったんだよ!」


彼女は俺の包丁にたじろぐ様子を見せず、その場に立ち上がった。たじろいだのは俺の方だった。常に余裕を見せる彼女に、俺は変な恐怖を感じていたのだ。

自身の法衣のような服についた埃を手で払い、俺と視線を合わせた。


「質問ばかりで何から答えたら良いのかわかりません。が、一応自己紹介をしておきます。私は、リヴェリス。とりあえず、そのククリのようなものを下げていただけませんか」


リヴェリスと彼女は名乗った。どう聞いても日本人のような名前ではない。ますます怪しさが増す主犯に対し、握っている包丁の左手は緩めず、警戒を解かない。


「下げるわけないだろ…」


「それは殺傷力のあるもの、に見えます。それを下げていただけなければ落ち着いて貴方の質問に答えることができませんよ」


「いや、この状態でも答えることはできるだろ。質問に答えてくれ、どうやって入ったんッ!?」


彼女は少し俺の方に傾くと、目に見えない速度で俺の突き出している左手首を右手でつかんだ。あまりにも速い距離の詰め方と読めない行動に、俺の体は全く反応できなかった。

彼女は握る力を強め、俺はその痛さに悶絶してしまう。女性だと侮っていたわけではないが、これほどまでの握力を持っていたとは思ってなかった。

徐々に左手は上に持っていかれる。彼女の右腕にはうっすらと、法衣越しから筋肉が浮き上がっているように見えた。

俺は遂に、痛みに耐えかねて包丁を左手からするりと落とした。彼女はフローリングにカタンと落ちた包丁を左手で拾い上げる。その間も俺の手首はものすごい握力で握られているが。


「い、痛い痛い痛いッ!頼む、放してくれっ…!」


彼女は俺の言葉を聞かず、左手に持つ包丁をじっくりと眺めている。


「ククリじゃない。これは…」


「頼む!もう何もしないから!手首を…はなして…」


悶絶している俺と彼女の目が合うと、手首から痛みが抜け始めた。床に膝をつき、放してくれた手首を俺は右手でさすった。真っ赤に跡が残っている。

視界に彼女のブーツが入る。俺は見上げると、俺を見下す図で彼女は言葉を発した。


「よかったです。どこか、落ち着いて話せる場所はありますか?」




「自分の名前は、立樹淳宏です」


先ほどの力の差を感じ、傍から見ると俺は少し縮こまっているように見えるだろう。言葉も弱々しかった。


「タチキ…アツヒロ…」


場所はダイニングに移り、いつもご飯を食べる机と椅子に向かい合って座っている。俺の部屋はそのままに、彼女にはブーツを玄関で脱いでもらってここに移動してもらった。



「改めて、私はリヴェリス。クロムガルド王国の筆頭騎士であり、召喚士です」


「筆頭…騎士?召喚士…?」


これは…つまり、あれか。異世界召喚という奴だろうか。

いや、だが彼女から魔法や剣などは見ていない。あの筋力は魔法のように恐ろしかったが、それは単純に鍛えていたのだろう。

俺は簡単には信じず、質問を続けた。


「日本出身では…ない?」


「はい。私は、クロムガルド出身です」


「そう…そんな名前の場所聞いたことないけど…。じ、じゃあ騎士っていうなら…何か、武器とか持っているのか?」


「武器ですか?それならこちらに」


彼女が右の掌を俺に見せると、そこから突然小さな閃光とともに物が現れた。

彼女がつかんでいるのは、まさに剣というものだ。

刃は無駄な装飾のない鋼色で、真っ直ぐに伸びた刀身がわずかに光を反射していた。

だが柄の部分には、深い赤色の革が丁寧に巻かれており、その中央には血のように紅い宝石が埋め込まれている。

今の一瞬で起こった出来事に、俺は開いた口が塞がらない。非現実的で、魔法だった。もう疑う必要もなかった。


「これが私の武器です」


「…あぁ…す、すごい」


俺はなんと言ったらいいかわからないまま、彼女は剣をまた魔法のように消して手を太ももの上に戻した。


「つまり、やっぱりあんたは…いや、リヴェリスは、異世界から来た人ってことなんだ」


よくある異世界系の小説では、主人公が死んだり、もしくは急に移動して転移して異世界に行くことが多い。

だが彼女は、異世界から来たのだ。こっちから向こうに行くのではなく、向こうからこっちに来た。逆異世界転移…みたいな感じだろうか。


「異世界…というのはわからないですが、この世界ではない別の場所という意味なら、そういうことになるかもしれません」


まだわからないことが多いが、ともかく彼女は異世界から来た人というのはわかった。

俺は両手を机に置き、最も聞きたいことを聞いた。


「リヴェリスは、いったいどうやってここに来たんだ?」


彼女は少し顔を俯かせ、考えがまとまったようにこちらに向き直った。


「私は、おそらく召喚に失敗し、私自身をこちらの世界に召喚させてしまったようです」


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