花に色を付けていく(前編)
:五章 班決め:
「今日は卒業旅行のいろんなこと決めるぞー」
「最悪……」
私は机に突っ伏してわかりやすく嘘泣きをする
「まぁまぁ班は一緒になれたんだから、いいじゃん」
「そうだけどー」
「部屋一緒が良かった」
「そんな事言うのー?」
そこで班の一人の青色の目が特徴的な同じクラスの少女が話しかけてくる
「私じゃ嫌?」
「別に葵と一緒が嫌なんじゃなくてさー」
あ、でも葵やたらと触ってくるんだよな
「ちょっと嫌そうな顔してるじゃん」
「だって葵いっぱい触ってくるじゃん」
「それは百合がお人形みたいに可愛いのが悪いと思いまーす。ね、すみれ」
「まぁそれは同意だけど、葵、百合になんかしたら殴るからね」
「はーい」
この二人、仲が良いのか悪いのか、よく喧嘩してるんだよな
「すみれさんは私が――」
すみれの後ろに人影が現れ、脇の間から腕を通してすみれをくすぐる
「ひゃっ……//」
「いやー、やっぱすみれさんってスタイルいいっ……がっ」
すみれが思いっきり足で後ろに蹴り飛ばす
大丈夫かな
「柚葉、殺されたいの」
「いてて……流石にそれは。でもすみれさんに殺されるなら本望かな」
「頭でも打ったの?」
「いや、これは元々ですよ」
「はぁ……そっちのが重症よ」
「どこ行くー?」
「私はディズ◯ー行きたい」
「長野よ。どこ行こうとしてるの」
「むー、すみれさんがボケに乗ってくれない。機嫌が悪しゅうございますね」
「誰のせいよ」
すみれって結構冷たいのに人気高いよね。やっぱ見た目が良いからかな?
「スキーがいいかな。長野ならスキー場いっぱいあるでしょ」
「まぁ順当にそうよね」
そこで、葵とすみれがこちらを見る
「百合?運動は大丈夫?」
「別に、大丈夫だよ?」
そんな心配されるほど運動できなくはないんだけどな。
「そうじゃなくて体調的に、よ」
あー、そういうこと
「んー、そこまで変化わかんないんだよね」
白化病は真っ白になるまで、ちょっとずつ体力もなくなっていく
もとの体力がなくて、そこまで感じていない
「てか、良いよ。最悪私休んでるから。そういうところってなんか食べれるエリアみたいのあるじゃん」
「まぁそうだけど……」
すみれが少しモジモジしてる。どうしたんだろう?
「百合ちゃんといちゃいちゃできないのが悲しいんでしょー? す・み・れ・さ・ん」
「そうだけど」
顔を赤くしてうずくまってしまった。やっぱすみれは可愛いな
「珍しい、私に煽られて反発しないすみれさん。やっぱ百合ちゃんラブですな」
「柚葉、うるさい」
「あらあら、かわいらしいこと」
なんか少しムカッとする。なんでだろう?
「柚葉、やめたげて。すみれが可哀想」
「あら、そうですね。百合の間に挟まるのは趣味じゃないですし、推しのカップリングを見てたいので。それじゃ」
「柚葉、さすがにキモいわよ。そこまで行くと」
「え!? 葵に言われるのは傷つくんだけど!?」
「うえーん、すみれさんー」
柚葉がすみれに抱きつき、嘘泣きしながらグリグリ頭を押し付ける
「はぁ……何やってんの柚葉」
それをすみれが優しく撫でる
なんだろう、少し胸がズキズキする
:五半章 12月2日:
今日は卒業旅行の班決めと行き先決めをしたのだが、全然決まらなかった
一応スキー場になりそう?
今日すみれが柚葉と葵と話してるのを見て、なんか変な気分になった
なんでだろう?
:六章 卒業旅行出発!!:
ピンポーン
家のベルが鳴った
朝から何?
急いで重たい体を起こし、玄関に走っていった
ガチャっと扉を開けると――
「おはよう、百合」
「え?」
そこにはいつも見ている長身の少女が立っていた
「なんで!? すみれが!?」
え、もしかして遅刻!?
「いやー、百合遅刻しそうで心配だったから」
時計を見ると6時半。全然まだ間に合う
てかいつもならまだ寝てる
「あら、すみれちゃんいらっしゃい」
「おはようございます、水瀬さん」
「ごめんね、来てもらっちゃって。この子絶対ギリギリまで起きなそうだったから」
「いえ、私が来たかっただけですし」
「相変わらず丁寧な子ね。こんな子が百合の奥さんになるって考えられないわ」
「ちょっとお母さん!?」
何言ってんの!? ほんとに
「水瀬さん、どちらかと言うと私は百合の旦那ですね」
「あら、それでも大歓迎よー」
なんか、すべて私が大事な話なのに、勝手に進んでる気がする
「ほら、それより百合、すみれちゃん待たせないように早く支度してきなさい」
「は……はい」
―――
「すみれちゃん」
「どうしました?」
「百合のこと、ほんとにごめんなさい」
目の前の女性が頭を下げてしまった
あなたが謝るべきじゃないのに
「それは水瀬さんが言うべきことじゃないですよ。失うのは私だけじゃないんですから」
というか、私と百合の思い出はこの2年間だけで、水瀬さんはこの18年の記憶が百合からなくなる
この人のほうが辛いだろうに
「お願いがあるのだけど、良い?」
「百合のことなら何でも」
水瀬さんが少し息を呑み、言い淀む
「……最後まで、忘れるまであの子のそばにいてくれないかしら。あなたが一番傷ついてしまうお願いなのはわかってる」
そんな傷
傷でも良いから抱えていたい
私はもう百合の居ない未来なんて考えたくない
百合さえいればほかは何もいらない
私の記憶が消えればあの子の記憶が消えないなら喜んで消す
何かを生贄にして、消えないのならば喜んでなんでも捧げる
それがたとえ私でも
「えぇ……百合がたとえ忘れても一緒に居ますよ。それが私の願いなので」
百合がたとえ私のこと
私との記憶を忘れたとしても、
すべての記憶を教えれば良い
百合が信じないなら、少し無理矢理にでも
逃げてしまうなら、
愛して
縛って
私のものに
どこにも行かないように、
何度も私を思うように
私しか考えないように
私だけで百合の世界を作ってしまえば良い
「絶対に離れないですよ」
水瀬さんに聞こえないように小声でそう呟いた。
「すみれー!! ごめん待った!?」
百合がドタバタ2階の自室から落ちるように降りてきた
慌ててる百合も可愛い
少し寝癖が残っている髪も可愛い
私のことを心配してくれるところも愛おしい
あぁ、私はこの子といられるだけで
幸せ
絶対に忘れない
「待ってないよ、早く行こ」
この幸せを……
―――
相変わらずよく寝るな……
学校につき、みんなでバスに乗り込んだ数分後、すみれは寝込んでしまった。
隣で天使のような顔と息をして、何故か手を握りながら
「すみれさん、相変わらずの独占欲っすね」
「いや、百合のほうが案外独占というより依存してそうだけど」
「あぁそれは確かに……っと、聞こえてたっすかね」
二人は前の席に座っており、席の隙間からこちらを見ていてそんな事を話している
どんな話してるの……
「どうなの?百合」
「なによ」
「すみれさんのこと、誰にも盗られたくない?」
「まぁそりゃ」
「じゃあ、すみれとずっとくっついていたい?」
なんか急に羞恥プレイが始まったんだけど
いや、私とすみれが付き合ってるのはこの二人は知ってる。てか、すみれが有名人すぎて結構な人が知ってる
「そんな、聞きたい?」
「もちろん。推しカプの供給なんていくらあっても良いんだから」
「えー、そんなに言いたくないんだけど」
「そこをなんとか。すみれさんがいると百合に無理強いすると殴られるから、この機に」
「柚葉……横見てみ」
「ん?葵どうし……あ」
二人が固まり、葵はそそくさとバスの進んでる方向に視点を戻す
「おはようございます……すみれさん、気分はどうでしょうか」
「その一言目があなたじゃなきゃ最高だった」
横を見ると、すみれが起きていて、すっごい眼光で柚葉を睨む
「おはよう、すみれ」
すみれが答えずに重心をこちらに倒す
「もうちょっと寝ていい?」
「うん、いいよ。ついたら起こすね」
「ありがと」
「あれ、私何組だっけ?」
「なに言ってんすか?百合は2組ですよ」
あぁ、そうだった。なんで忘れてたんだろう
「大丈夫?百合」
「大丈夫だよ、葵。よくあるじゃん、去年とかのクラスがごっちゃになるやつ」
「まぁ、そうだね」
そうそう、学校って番号多くて時々混ざるよね
そこで、私の手を握っているすみれの手に力が入った
どうしたんだろう、すみれ
悪夢でも見てるのかな?
バスを降りた瞬間、冷たい空気が肌に触れる
目の前には、私の変色してきた髪の色の雪が陽の光を反射して眩しい
それが全体に広がる
「雪だー!……ごほっ」
はしゃいだ瞬間、肺の奥がきゅっと痛む
冷たい空気をいきなりたくさん吸ったからかな?
「大丈夫?百合」
「もちろん、ちょっと騒ぎすぎただけだから」
「それなら、まぁ」
「それより早くリフト乗りに行こ!! あれ乗ってみたかったんだよね」
「あれ乗るの」
「乗らないと滑れないよ?」
「そう……よね」
カタンっとリフトが動きだした瞬間、すみれが私の袖をつまむ
「……ねぇ百合」
「ん?どうしたの、すみれ」
「高いよ……落ちない?」
普段あんなにやる気ないか落ち着いてるのに、声が少し震えている
なんだ、この可愛すぎる天使は
すみれは震えながら私にくっついて来ている
やばい、可愛すぎる。私が死んでしまいそう
「すみれって高いとこ苦手なの?」
「うん」
「じゃあ、乗る前に言いなよ。ゴンドラもあったんだから」
「だってやだ、恥ずかしい」
やっぱ何だこの天使は
リフトが進むに連れ、足元の雪はどんどん遠くなっていく
すみれは耐えきれず私の腕にぎゅっとしがみつく
「すみれ、大丈夫?」
「無理……やだ、怖い」
「大丈夫だよ、ほら、バーもあるんだからさ」
「でも怖い、百合……手」
すみれがそう言うので、すみれの指に自分の指を絡める
「あったかい……」
「すみれ、可愛すぎるんだけど」
「うるさい、今だけ甘えさせて。二人なんだから」
甘えてくるすみれが珍しくて、胸が五月蝿い
なんだこの天使は
「いいよ、降りるまで繋いでてあげる」
「降りても繋いでて」
「え?」
「やだ、百合とずっと触れてたい」
「まぁ良いけど」
はぁ、ほんとに可愛いなこの天使は
今すぐ持ち帰りたいぐらいだ。言ったらほんとにすみれがやりそうだからやめとこ
胸と顔が熱い
それにすみれは、まわりがこんなに寒いのにすごくあったかい。
雪の真っ白い景色の中、このリフトだけ温かな色で染まっている
「ねぇ、あの二人イチャイチャし過ぎじゃない?」
「ほんとほんと。すぐ後ろに私達乗ってるのにね」
「すみれってほんとに百合相手だとめっちゃ甘えん坊だよね」
「ね、いつもあんなに冷たいのに百合といるともう誰かわかんないよね」
「まぁいつもと違うで言うとあんたもよ、柚葉」
「え?私?」
「そりゃいつものオタク口調はどうしたのよ」
「えー、あれ疲れるし葵ちゃんキモがるじゃん」
「そりゃうざいもん」
「二人の時ぐらいいいじゃん。楽にしても」
「まぁ私もそっちのが楽だから良いわ」
「みんなー、上で写真撮ろうよ!!」
リフトで上に4人ともついたので、せっかくだから写真を撮ろうとなった
「え、それなら雪だるまとか作ろうよ」
「いいですな。そっちのが動画映えしそうですしな」
「あんた、オタクとギャルどっちよ」
「そんなの良いから撮ろうよー。雪だるま作るのも良いけど、早くしないと滑る時間なくなっちゃうよー」
「いま朝の10時よ。当分滑れるわよ」
「それでもー……てかすみれが私に冷たい。珍しい」
「だって手離したから」
すみれが二人に聞こえないような小声で私に呟く
「ごめんだし、すみれ二人の前だとそんなにくっつかないじゃん」
「だって今日は百合とくっつける時間少ないんだもん」
すみれがふんっとそっぽを向く
「すみれさん、百合ー、早く撮るなら撮ろうよー」
写真を撮り終わり、いよいよみんなで滑り始めたのだけれど――
「なんで、すみれあんな滑れるの」
すみれはスキー初めてって言ってるのに、もうなんかジャンプ台とかで遊び始めてる
あんなもんなの?
いや、なわけない
私なんてもう転びすぎて全身ビッショビショなんだけど
「すみれさん、バケモンっすね」
「あぁ柚葉、どうしたの?」
「いやいや、百合がずっとコケてるから手伝いに来たんすよ」
すみれが良かったな
いやいや、流石に失礼でしょ
柚葉だって善意でやってるんだから
「あと、二人のカップル話聞きたいですし」
柚葉が不敵な笑みを浮かべた
あ、これ善意じゃない
「すみれがよかったなー」
「それはひどくないですかー」
「百合、柚葉!!」
柚葉に手伝って立ち上がったところで、横から叫び声に近い葵の声がした
「どうしたんすか、って! やばいやばい、百合早く避けて!!」
横から葵の叫び声が、どんどんすごい勢いで近づいてくる
そう、横の方から思いっきり葵がコントロール失って突撃しに来ている。
「これ止まらないんだけどー!!」
「そういえば、葵って運動そこまで得意じゃなかったよね」
「そんな事言ってる場合じゃないっすよ、百合早く!」
「無理」
なぜ無理かって、また倒れたから。
そんな様子を見た柚葉が、珍しくため息をつき、
そのまま葵に向かって走り出した。
「ちょ!? 柚葉!? 危ない!!」
「コケてる人に突撃するほうが危ないっての!」
勢いそのまま、葵を抱き寄せ、持ち上げ、一回転して二人とも止まった。
「ありがと……柚葉」
「それより、大丈夫? 葵、怪我してない?」
「あんた、なんで……こういう時に限ってかっこいいのよ」
葵が珍しく顔を赤くして、抱えられている柚葉から視線をそらす。
「そりゃ、葵の王子様だから……かな」
「うるさい……//」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
後編は4〜5日後に更新する予定です。




