第8話:神国破壊⑧
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「フゥッ!」
女の吐息が聞こえるとともに、その左脚が宙を舞い――右脚は一瞬 遅れて地面を蹴る。
女の身体は、半時計周りに回る秒針の様に流麗に――
いや、0.1秒間で180° 逆回転する狂った時計の針の様に、激しく半回転した。
(ものすごく良い位置にきたパス……もとい女の頭部。
反射的に顔面に膝蹴りしそうになるが とりあえず我慢するオウカ。)
――女の右ヒザが、12時の方向――オウカの顔面めがけて飛んでいく。
-ガッ- -ドボッ-
2つの音の重奏――
前者は……女の右ヒザと それを防御するオウカの左掌の、衝突音。
後者は……オウカが手加減して放った右拳が、女の みぞおちに食い込んだ音だ。
――狂時計の針は、地面へと倒れた。
「グッ……アアァ……ゼハァッ……ッッ!!」
赤マーカーが消滅した女は、先ほどのオウカの演技を遥かに上回るリアリティで苦しむ。
オウカは、大柄の男が意外にしぶとい ぽっちゃり体型の男を気絶させて地面に沈めていく様子、および 双方のマーカー消滅を確認していたが、女に視線を戻す。
ほう、この苦しみ方は勉強になるな。
名女優の誕生に立ち会えた――
いやまあ、演技ではなく本当に苦しんでいるのだが。
(視界の端で、ぽっちゃり体型の男が救護班に運ばれていくのを確認)
――女は、10秒も立たない内に スゥッと 立ち上がり、組手続行の意思を示した。
目は、完全に据わっている。
――もう1つの ”2名vs2名” が成立したようだ。
(その中には、先程ツイストパーマの少年に沈められて、約5秒後に気合で立ち上がった短髪の男もいる)
その4名は、少年の戦術を見た後、色々と思案していたのだろう。
短髪の男を筆頭に、各人が渾身の演技を披露していく。
「えっ!試験官さん、それは危ないです!」
「あっ、他の受験生さん、その凶器は なんですか?」
「えっ、武器を支給?早い者勝ち?ラッキー」
複数の役者が誕生して、マヌケ……もといカオスな様相を呈している。
だが、新人役者たちは懸命に努力するも 上手くいかない様子だ。
新人役者たち4人は、徐々に無言になっていく。
――候補生として、半年間の訓練を乗り越える時にしていたであろう、精悍な顔つきへと変貌していく。
間合いを詰め、各々の戦いを展開していく。
-ドッ-
-ゴツッ-
-バチィッ!-
候補生として、幾度もの苦難を乗り越えた肉体同士・精神同士が激しくぶつかり合う音が響きわたる。
――少年にはマーカーが表示されていないらしく、
腕組みをして、ニタニタと笑いを浮かべる。
「アハハ……慣れてないヤツがやっても無駄だって。
いや、慣れてる俺でも こんなビックリ芸 1回限りだし……。
2回目以降はリスクが増すだけだと、気づくの遅いよ」
……性格が悪そうだな。
(いや、性格の悪さを表に出さない様にしているだけで、私も人のことは言えないかもしれないが)
アンタ、他の受験生からムダに反感買うリスクを考えないのか。
いや、どーでもいいな。
――少年は続ける。
「はあ……合格したくねーし
組手ルールとか どうでもよくなってきたわ。
……ったく よぉー」
ちょっと黙っててくれないかな、とオウカは心の中でつぶやいた。
――オウカは思考のベクトルを、少年から得た戦術を深掘りしていく方向に切り替える――




