第5話:神国破壊⑤
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■組手試験ルール
・「ARレンズ」着用の上、待機
敵=赤マーカー表示
味方=緑マーカー表示
(※視界の外にいる者には、マーカーは表示されない)
・赤マーカーが表示された者を、徒手格闘で制圧する
□補足情報
・ARレンズ=拡張現実コンタクトレンズ
(候補生の時に支給)
・マーカーは両者に同じ色が表示される
(例:受験生AのARレンズに、受験生Bに赤マーカー表示
=受験生BのARレンズに、受験生Aに赤マーカー表示)
・国際条約で定められた戦争(国家間の武力衝突)ルールに ほぼ準拠
(※ただし、武器使用は禁止)
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……実施本部の関係者が出入り・待機している場所から発信される電波をARレンズが受信し、マーカー等が表示される仕組みだ。
中を見渡すと、小型カメラが四方に設置されている。
多分……いや間違いなく、女性責任者たちがモニターで監視しているだろう。
そして、試験官3人が組手会場の端の方に待機している。
(ちなみに、試験官に赤マーカーが表示される…という ありがたくないサプライズは、無い)
――ビリビリとした緊張感が、肌を叩く。
10名それぞれが、他の9名全員が視界に入るように位置関係を調整。
自然と、円を描くような陣形になっていく。
[組手試験:開始]
ARレンズを通した視界に、文字が浮かび上がった。
――5秒経過。
マーカーは表示されない。
――10秒経過。
マーカーは表示されない。
――20秒経過。
マーカーが一向に表示されないので、受験生の一人が端にいる試験官の1人のいる方に顔を向ける。
「あのぉ、故障して……」
一拍遅れて、その背後にいる受験生が スゥ……と距離をつめ、後頭部めがけて前蹴りを繰り出した。
-ガツッ-
鈍い音が響きわたると同時に、蹴られた受験生はよろける。
赤マーカーが表示されたようだ。
蹴られた受験生も体勢を立て直し、応戦する――
――オウカのARレンズに、赤マーカーが表示された。
対象者は、ちょうど目の前 10m先にいる男だ。
その男の上に、視界の邪魔にならないよう配慮された ”赤い横線(半透明で太く短い)” が引かれている。
(その相手にも、オウカに赤マーカーが表示されている)
相手は、「あのぉ、故障して……」から、そちらの方を見ていたが、慌ててオウカに目線を合わせる。
――オウカが本来の実力を出せば、相手が目線を合わせる前に一瞬で間合いを詰めて倒せていた。
だが、低く偽った実力のまま、倒さねばならない。
やれやれ、面倒だな。
オウカは、一直線に早足で歩いていく。
相手の全身の筋肉が みるみる硬直していくのが、容易に伝わってくる。
オウカは、さらに間合いを詰めていく。
「あ……あいつの兄貴として……胸を張れる立派な男に……」
相手からボソボソと独り言が聞こえてくるが、オウカは陽動と判断――気にも留めない。
ぐっ、と相手の右肩・右腕に さらに力が入り、拳を強く握る。
オウカは、相手の拳撃が届くであろう間合いに入った。
相手は、右の拳を撃たんとばかりに振りかぶる。
――こいつなら、一瞬で倒しても不自然ではない、
低く偽った実力は 疑われないためではある。
しかし、ある程度の強さは見せておかないと ”国衛隊で将校の地位を得る” という任務自体を遂行できない。
…ああ、板挟みって辛いものだな。
-グチャッ-
相手が右拳を撃とうと振りかぶると同時に、オウカは左の拳を相手の顔面の中央に叩き込んでいた。
相手の体は 海老の逆バージョンの様に のけぞりながら地面に背中から着地し ドゥッ、と音を立てた。
ぴくぴく、と痙攣した相手は、戦闘不能と判断され――赤マーカーが消えた。
数秒後、予め待機していた救護班が組手会場内に入り、そして相手を会場外に搬送していく。
(救護班に赤マーカーが表示されるサプライズは、無い。少なくともこの場において)
――大柄の男がオウカの背後に忍び寄る。
そう、彼の目には(ARレンズには)オウカに赤マーカーが表示されている。
(反対に、オウカには彼自体が視界の外にいるので、赤マーカーが表示されない)
オウカは背を向けたまま、敵意をもって忍び寄る その男を察知していた。
――さっきのヤツよりは、強そうだな。
ふむ、適度に苦戦してみるか。
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