第2話:神国破壊②
カツッ、カツッ……
静寂の中、足音が響き渡る。
足音の主は、壇上の舞台袖から姿を現す。
その女性は、腰まで届く長いポニーテールを揺らしながら壇上の中央へと歩いていき、そして止まる。
この試験の責任者であろう その女性は、第一声を発した。
「諸君らの使命は、日ノ国の平和を守ることである」
そして、続けた。
「そのための任務は多岐にわたるが、中でも最重要といえるのが――
日ノ国を” あの国” の侵略から護ることだ」
具体的な国名を挙げたら、この国のオールドメディアが「差別だ!」などと騒ぎバッシングしてくる。
それに対する配慮だろう。
「――この日ノ国には、他国スパイが多数 潜り込んでいる。
他国から ”スパイ天国” などと、不名誉極まる蔑称で呼ばれ――」
候補生としての座学で何回も聞いた内容だが、特に強調したい内容を改めて説明しているようだ。
「――では、試験内容について説明していく」
2日間にわたる試験の内容説明に入った。
1日目は筆記試験。
2日目は組手試験。
(とうぜん事前にも知らされているが、食い違いなどが発生しないように、万全の確認の意味を込めての説明だ。)
つまり、この内容説明の後には、休憩をはさんで筆記試験が行われるのだ。
――この試験の責任者であろう女性を見て、オウカは少し危機感を感じていた。
”身のこなし”
いや別に、檀上でアクロバティックで派手な動きをしているわけではない。
どこかのビッグテックのCEOばりにプロジェクターの前を 左へ右へ、歩いているだけだ。
――しかし
足音が聞こえない。
発せられる言葉と言葉の間、数秒間の間の静寂。
その間に聞こえてくるはずの足音が、無音なのだ。
(先程の「カツッ、カツッ…」は、候補生たちに自分の登場を印象付ける演出だったのか?)
距離が離れていることもあるが、あそこまで足音がしないものなのか。
そして、歩き方。
歩き始める時。
歩いている時。
静止する時。
身体の向きを変える時。
その動きの察知しにくさ。
全身の体幹の安定感。
その動きは明らかに精錬された武術家のそれだ……と、ビリビリと伝わってくる。
周りにいる他の試験官とは、明らかに異質だ。
”事前に聞いていた情報”と違う。
――オウカは、冷や汗をかいた。
そして、思考の渦へと飲み込まれていく――
「オウカ、休憩だよ~」
エレナの声で現実世界に引き戻され、いつの間にか説明が終わったことに気づいた。
「ああ、すまない。この後は筆記試験だな。」
休憩中、エレナは他の複数人と同期生と情報交換をしていた。
オウカは会話に加わらず、スポーツドリンクを飲みながら少し離れたところで耳を傾ける。
どうやらあの責任者は、”忍者族” の一員らしい。
オウカは再び、思考の渦へと飲み込まれていく。
――忍者が忍者として不特定多数の前で姿をさらすことは、デメリットが大きすぎる
顔を知られていることは、隠密行動の際に障害になるからだ。
そのリスクを承知で出てきた…
出てこざるを得なくなった…
いや、”牽制” の意味もあるのかもしれない――
……休憩時間が終わり、体育館に再び集まった受験生たち。
責任者の女性は、宣言する。
「これより、正規隊員 選抜試験を開始する」
・一気読みできるサイト(優先的に投稿)
https://i-state.jp/
https://x.com/istate001
・Bluesky
https://bsky.app/profile/i-state.bsky.social




