第19話:最終目的⑧
――その様子を、近くの雑居ビルの屋上から見ている2人の男。
後輩らしき男は、双眼鏡を置いて缶コーヒーを手に取りながら、言葉を続ける。
「こないだの選抜試験の責任者のハツメさんが、オウカってのを要警戒リストに加えたんですよね」
「ああ、組手試験中のモニター監視時、コタロウとの組手に一瞬の違和感を感じたらしい」
――先輩らしき男は、鉄扇を懐から取り出しながら、そう答えた。
言葉を続ける。
「終了後に心理的に揺さぶってみたら、更に違和感が強まったらしい。
”恐車の術” と ”楽車の術” の応用――つまり、プレッシャーかけた直後に安堵させても その感情を一切 出さない。
逆に不自然だと」
――先輩らしき男は、そう言いながら鉄扇の柄の部分を引っ張る。
「コタロウは、ブラフをかける事ばかり意識して、相手がブラフかけることへの意識が弱すぎる……と試験官も言ってましたね。
覚えたモノを使いたがる……気持ちはわかるが、忍者族内の組手でも、複雑な事ばかりやりたがる。
シンプルさも織り交ぜての緩急も教えなきゃ。
頭で考えずできるようになれば、相手が仕掛けてくるブラフの看破に意識を回せるし」
――鉄扇の柄部分から、銀色に輝く刃が姿を現す。
短剣。
暗器・仕込み鉄扇。
刃の部分を布で磨きはじめる。
「チャンスは一瞬。慎重になりすぎるとチャンス自体を失う。
即座に掴みに行くことは重要だが、ブラフであるリスクも考慮したうえで、虎穴に入る。
……という事もな」
「つーかコタロウ、礼儀正しくて真面目ですよねぇ。それが裏目に出て、性格悪い演技は 加減がわからず過剰になりがちじゃないすかね」
うなづく男。
数秒間の沈黙の後、再び口を開く。
「罪人との司法取引、忍者族内の重大なルール違反者への罰則……として、賊のフリをさせるとは」
――磨き終わった刃に太陽光を反射させ、短剣を水平に構える。
「緊急要員も野次馬の中に複数待機させなきゃいけねーし、いろんなトコに事前許可もらわなきゃだし、スパイ容疑者一人にめっちゃコストかかるわ」
――水平に構えた短剣を、銀色の刃を――断頭台のように、真下に落とす。
「──スパイ阻止法が あれば、こんな面倒なことしないで済むのに」
神妙な面持ちを浮かべた後、肩をすくめながら口を開く。
「……無能な味方より、味方の地位を得た有能な敵 のが遥かに怖いっすね」
――短刀を鉄扇に仕舞い その鉄扇を広げると、日ノ国の象徴である日章が姿を現した。
「――ま、オウカに関しては ”保留” と。
”問題なし” と判断したら、万が一スパイだったら俺らが責任追及されるからな。
引き続き、他の忍者に監視されてもらおう」




