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I-State(侵略国家)  作者: エス
国衛隊 入隊編
10/63

第10話:神国破壊⑩


―――― ”候補生として不自然な強さを隠す”


不測の事態に目を見開いたオウカの思考から、1つの制約事項が一時的に忘却された。


-バチィィッ-


オウカは 右の裏拳で、少年の右の拳を弾き飛ばし――


――そのまま顔面に掌底を叩き込んだ。


-ドッ-


不安定な体勢のまま、掌底を顔面に撃ち抜かれた少年の身体は、面白いくらい勢いよく後ろへと吹っ飛んでいく。




同時に、視界の端――


全速力で接近してくる大柄の男の姿、および 新しく表示された赤線マーカーを確認。


――遅い。


一気に間合いを詰めて――




……いや、必要ない。


オウカの左側から、それは全速力で近づいてくる。


――華麗に宙を舞う 美しい両脚が、オウカの視界に入った。


同時に、緑マーカーも。


- ドゴォッ!-


大柄の男の頭部の右側に、横一文字に伸びた女の身体。


見事なドロップキックを炸裂させた――狂時計の針。


その見開かれた両目を血走らせながら、緑マーカーを従えながら、


大柄の男と仲良く そして勢いよく、オウカの視界の右側へとフェードアウトしていく。




左回転の勢いを持続させるオウカ。


オウカの視界に入るのは――


力尽きて横たわる背の低い男(赤マーカー消滅)と、精悍な顔つきで闘う4人。


そして、再び視界に入る3メートル先の少年の姿。


この時点で、オウカが少年の顔面を撃ち抜いてから 0.2秒が経過。




――0.3秒経過。


後ろへ吹っ飛んで行く少年の眼前――にオウカはいた。


先程の 体重を乗せなかった掌底と違い、全体重を乗せた右の突きを少年の顔面へと放つ――




”候補生として不自然な強さを隠す”


――オウカの思考に1つの制約事項が想起された。


同時に右の突きを中断。


反動で、右拳に乗せられていた全体重がオウカの全身へと移行――推進力となって全身が加速してしまう。


左足で踏ん張って勢いを止め――


間に合わない!




-ガドォッ-


なんとも不細工なショルダータックルが成立。


両者の身体が宙を舞い――そのまま地面に叩きつけられた。


-ダァン- -ダァン-


同時に右側から、ドロップキックで吹っ飛んでいった2名が同様に叩きつけられた音が響く。


痛々しい二重奏――




――体温で物理的に熱い2組のカップルたちは、すぐに起き上がろうと努力する。


オウカは反射的に、間髪入れず立ち上がった!


……が、平衡感覚が戻らず千鳥足……の演技。


少年が、立ち上がるのに苦労しているからだ。


辻褄合わせの為、接戦を装わなくてはいけない。




――右側から、殴打音が断続的に聞こえてくる。


視線をそちらに移すと、長い黒髪を揺らしながら馬乗りで大柄の男を殴る、女の姿。




――再び、視線を正面に戻す。


その後ろで、精悍な顔つきで戦い続ける4人の候補生たち。


……その上に、赤マーカー2つ・緑マーカー2つ、が表示されたからだ。


加えて、その光景を遮るかのように、少年が ぜえぜえ…と肩で息をしながら立ち上がったから。


オウカの裏拳を食らった その右手は、赤く腫れあがっている。




再び相対する2人。


少年は、呼吸を整えながらオウカから見て右側へと歩き出す。




――BGMが鳴り響く。


女が奏でる、一方的な殴打音……精悍なる4人の候補生たちの、息切れした呼吸音……。


協奏曲の中――


否。


狂想曲の中、社交ダンスでも始めるかのように……いや、それよりも大分大きく ぐるり、と迂回する少年。


(大柄の男の赤マーカー消滅を、視界の端に確認)




”精悍なる4人を、オウカの視界から外す”


その意図が、あからさまに伝わってくる。


ジリジリ、と間合いを詰めはじめる少年。



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