殺人犯と同じ部屋にいられるか!俺は自分の部屋に戻る!
・殺人犯と同じ部屋にいられるか! 俺は自分の部屋に戻る!
【さつじんはんとおなじへやにいられるか! おれはじぶんのへやにもどる!】
使用者
・殺人が起こった際に疑心暗鬼になり、1人でいようとする者。
使用する状況
・外界と隔離された空間が主。
・大抵は長期休業のバカンスの最中である。
使用後の症状
・使用者はその後、自室で遺体の状態で発見される。
・訪問先で必ず殺人事件が起こる謎の名探偵に注意。
使用例
「おい、今なんて言った?」
「この中に、殺人犯がいるかもしれないな、と言ったが?」
人類初の試み。 宇宙ステーション移住化計画。
今回はその計画の試運転であり、その目的は、一般人の場合、宇宙での生活範囲の限界はどこまでか。 つまり、プロがいなくてもどこまで生活に支障が出ないか、ということ。
というのも、機械工業の進歩は凄まじく、今では生活の何もかもが機械だけで成り立たせることが出来るまでになった。
そのため、一般人の中から希望者の抽選で15名の参加者が選ばれた。 かくいう、俺もこの抽選に、はれて選ばれ最高のきぶんだったのだがーー
まさかの殺人事件がおこったのだ。 そう、全てが管理されているはずのこの宇宙ステーションで。
事件は、試験入居開始からちょうど一週間後の今日。 宇宙へ直接繋がっている、停泊庫の監視カメラが映らなくなっていた。 トラブルが起こった場合でも、機械が全てを全自動でこなしてくれるのだが、物好きな奴もいる者で、参加者の一人がその現場を見に行った。
そこで、事は起こった。
その見に行った参加者が停泊庫で死んでいたのだ。
「やっていられんな。 私は自室にもどる。 殺人犯と一緒の部屋にいては神経がもたないんでね」
「おい、待てよ……って、行っちまったか」
参加者たちは5人でひとつの班を組織し、それぞれの班長が話し合った結果、事故に巻き込まれたか、殺されたか判らないこの状況で個人でいるのは危険だから一旦会議室に全員集めたのだ。
「班長の言うことは聞いて欲しいんだけどなぁー」
不幸にも(?)俺は班長に選ばれてしまったんだ。
「いや、ホント危険だからな。 何はともあれ皆で話し合いたいというのに、あの人はまったく。 連れ戻しに行かなくちゃ」
しかも、何故か3人の班長の中のリーダーまで勤めることになったとか……。
「みんな、聞いてくれ! 今からとりあえず少しの間自由時間を設けるが、必ず3人以上で行動してくれ。 何があるか分からないからな。 では、以上だ。 あと俺の班のメンバーは一度集まってくれ」
……うん、ちゃんとまとまって動いてるな、よしよし。
「集まったな。 悪いが自室に戻った彼を連れ戻したいから俺の他に二人手伝って欲しいんだ。 ……うん、ありがとう。 では、行こうか」
はてさて、なんと言ったら部屋から出て来てくれるかなぁ。 混乱してるだろうし。 …………ふぅむ。
「ーちょー。ー班ちーー。班長! 着きましたよ!」
おぉ、いかんいかん。 考えごとしていたら気がつかなかった。 結局良いのが思い付かなかったが、しょうがない。 当たって砕けろだ。 インターホンをポチっとな。
「おーい。 出てきてくださーい。 あなたの意見も聞きたいんですー! ……返事くらいしてくださーい!」
なんだか様子がおかしいぞ! 不本意だがマスターキーを使うか!
「すみません! 勝手に入ります!」
ーーピピッ、マスターキーを認証しましたーー
「大丈夫でーーッ!」
「し、死んでる……」