毒
大学2年の春になった。週に一回の小説サークルの活動を終え、いつも通り家に帰る。活動といっても、読んだ本の感想会がほとんど、サークルメンバーの中には自分で本を書きたいという人もいるが、私は楽しむ側で十分満足している。人並みの文しか書けないから、本をすごいとか面白いとか思えるんじゃないかな、なんて本を書けない建前を作って自分を固める。私はこうやって生きてきた。自分がいらないと思ったものとは関わらないように馴染まないようにしてきた。
私は高校1年の頃に一個上の先輩に一目惚れをした。といっても話したこともないし、告白しようとか考えたこともない。私はクラスでも端っこ、モブというのにふさわしい人間だった。別に自分を卑下してるわけではないし、別にこの事実が悲しいとかでもない。ただ、客観的にみてそうだった。対して先輩はみんなに慕われるヒエラルキートップ層の人、しかも先輩。関わるきっかけもなかったし、欲しくもなかった。自分が壊れるほど好きになることを避けたかった。この時も自分を固めた。しかし、恋愛感情は心の内から湧いて出てしまったもの。周りを遮断したとこで、自分の中に居座り続けている。初恋は毒だ。
何度忘れようとしても、思い出しぶり返す。写真を見て風景を見てその人を思い出す。身体中に毒が回っている。もう末期だ。「海と毒薬」を愛読書にしていた私だったが、海だから毒薬も気にならなかっただけであって、私ごときに毒なんて巡ってしまえば、それは生涯血液に流れ続け、身体を蝕むに決まっている。忘れるために、大学生になって付き合った人もいるが、案の定、毒はさらに効き目を増し、結局別れてしまう。毒を抜くための行動が毒を活性化させてしまった。なんてアホらしいと諦めもついてしまった。次はいつ私を蝕むのだろうか。