0日目 <魔界にやってきました> =2=
変態をKOした後に別室に通された俺は、代わりの着るものを要求した後に兵士人から説明を聞いた。
簡単に言ってしまえば、
『ここは魔界であり、侵入不可能のはずの魔王個人の庭園に倒れていた』
ということらしい。
なおこの結論に至るまでに3人(人と言っていいのかはわからないけど)KOした。
1人目は何故か襲いかかってきてボディに一撃によるKO。
2人目は返りうちにされたと知って襲ってきて顔面ストレートにて一撃でKO。
3人目は2人目を文字通りぶっ飛ばしたところ、巻き込まれてKO。
それを見た周りの兵士らしい人たちは真っ青になる始末。
現状を聞くために兵士らしい人を一人捕まえてオハナシ。
助けを求めて左右を見渡す兵士だったが、全員が目線をそらされる。
観念したのか、話を始める。俺が「は?」とか「え?」とか言うと、何故か「ひぃ」とか「い、命だけは……」と言う始末。若干傷ついた。
とりあえず理解はできたところで、無表情のメイドらしい人が俺を呼びに来た。
案内されたのは食堂のような場所。長いテーブルに真っ白なテーブルクロスが敷かれており、テーブルの向こう側には先ほど殴り飛ばした変態が座っていた。
顔面には俺が叩き込んだ部分に湿布が貼られており、とても痛々しく見える。
メイドさんらしい人が椅子を引いて、お座りください、と催促してきたので、椅子に座る。
しっかりと座ったことを確認してから一礼し、俺の後ろに下がった。
一分くらい経ったころだろうか。ようやっと相手から話を切り出してきた。
「貴方は人間、なんでしょうか?」
そう尋ねてくるのは先ほどフルボッコにした変態。
丁寧な言葉となったのは……やっぱりフルボッコした影響なんだろうな、と内心思いながら、
「俺たちの定義ではそうなる」
と答えた。
「う、嘘だろう……そんな、我等は魔族。おまけに我が障壁を二度も破り、俺に重大なダメージを与えるとは……」
ぶつぶつと言い始める変態。
「しかも殴りなれている……そ、そうだ、貴方は、人間なのだろう。身分は?」
「身分?平民で学生。ちなみに他人を殴ったのは初めてだ」
絶句する変態。さらにぶつぶつ言い出す始末。だが、俺は聞かなければならないこと。それは『元の世界に帰る方法』。その方法を聞いたが、「……ん、あ、いや、無理ではないかと」といわれる。
バン、っとテーブルを両手で叩いて立ち上がる。
「どういうことだ!」
「い、いや、落ち着いて、説明します。しますから落ち付いてください!」
乱暴に椅子に座って説明を待った。
…………
………
……
「つまり、人間が行き来するのは事実上不可能。魔族は『契約者』が召喚したときのみ行き来することができる……となれば、俺はどうしてここに来ることができた?」
「それは、正直解りません。原理も解りません。で、ですが来ることができたということは帰る方法も探せばある、はずです」
「断言はしないか。まあいいや、となれば住むところなんか探さないとな……手配は頼めるんでしょう?」
「いえ、客として貴方を迎えたいと思います。人間がこの世界にいるのも問題があるので」
「かもしれないな……解った。その通りにするけど、それが契約ならしない」
契約ではありません。と断言された後に「世話人をつけよう」と一言言うと、後ろに下がっていたメイドらしい人がすっ、と俺の横に立ち、一礼。
「メリア、と申します。貴方様のお世話をさせていただきます。失礼ですが、貴方様のお名前を教えていただきたいのですが」
ああ、確かに、と納得したところで俺も立ち上がり、
「紫藤統耶、と申します」
「シドウ・トウヤ様ですか?ええと、苗字がシドウ、名前がトウヤ、で紫藤統耶様でよろしいでしょうか?」
「そうです。今後よろしくお願いします、メリアさん」
「私のことはメリアと呼び捨てで構いません、シドウ様」
「俺のことも統耶で構いません。苗字で呼ばれることが少なかったもので、名前で呼んでもらった方が楽です」
「解りましたトウヤ様。それでは、お部屋にご案内させていただきます」
俺たちは魔王をそのままに、俺に当てられた部屋に案内された。