つぎなる使徒のもとへ
貨幣計算を間違えていたので直しました。
「失礼します、ジン様をお呼びいたしました」
ノクサス本部の最上階に位置するノッチの仕事部屋に案内された。
「すいません、わざわざこんなところまで来てもらっちゃって」と申し訳なさそうにするノッチ
「こっちが無理いってお願いしたんだ、気にしないでくれ」
「早速ですが、これがジン様から預かった装備品の合計の値段です」
そう言って出されたのは山盛りに摘まれた白金貨だった。
この世界における貨幣制度は一番下から鉄貨→銅貨→銀貨→金貨→白金貨という順番になっている、下から順番に100倍ずつ価値が増えていくというシステムになっている。感覚としては鉄貨1枚で約1円なので、今俺の目の前には1億円の束が山積みに置かれていることになる。
「え、これなんか多すぎないか」
こんな大金を見たことも手にしたこともないジンにとってあまりにも衝撃的な出来事だった。
「いやぁ、数が数だったのでそれなりにいきました。、とはいえ、ユニークが四点あったのが大きかったですね、合計が白金貨114枚だったのですがその8割がユニークについた値段でした」
「ユニークの装備ってそんなに高いんだな」こっちの世界の価値基準に明るくなさ過ぎてよくわからないなぁ。
「そうですね、1週間も時間がかかったのもそれが理由で、ユニーク装備はそのほとんどが言い値で決まるようなものばかりなので交渉に少々時間がかかってしまいました」
「難しいお願いして悪かったな」なんだか少し申し訳ない気持ちになる。
「いえいえ、うちの得意分野なのでまた何かあったら遠慮せず言ってください」
「あぁ、ここにいる間は世話になるかもしれない、その時は頼むよ」そう言いながら白金貨を収納魔法に放り込む。
「はい、待ってますね」
「じゃあ、少しの間世話になった、暫くの間はウーランバードにいるつもりだから何かあった呼んでくれこいつを預けておくから。『召喚獣:不死鳥の雛鳥』、こいつに魔力を流し込めば俺に知らせが届くようになっているから」
「こんな贈り物までしていただいてありがとうございます」
こんなに喜んでくれるなんてな、全くもってうれしい限りだな。
「またな」
「はい、また」
今生の別れというわけでもないのに意外と寂しい気持ちになるもんだな。そんなことを思いながらノクサス本部を後にする。
__________
「さて、資金調達もできたことだし、次の目標は身分証の確保かな」
スラムから一般区域に入るのはさすがに気を使うな。
路地裏からタイミングを見て人混みに体を滑り込ませる。
『ここは、おそらく繁華街か』
多くの露店が日々しのぎを削っているウーランバード随一の繁華街、ここら一帯は全てターコイズ商会の傘下に入っている。
『ロブスかターコ、正規のルートで身分証を発行するならロブスの方に行くべきだが希望は薄いか、よっぽど身分がはっきりしていないと難しいだろうな、となればターコに縋りつくしかないか。』
目に入った串焼き屋に近寄る「おやじ、串焼きひとつ」
「ボアとヒクイドリどっちがいい」
「ボアで」
「あいよっ」
「ターコイズ商会がどこにあるか知っているか」
「なんだ、この街に来るのは初めてか」
「あぁ、俺も露店を出したいと思ってな」
「この通りをまっすぐ行って突き当りを右にいったら異様なほどデカい建物が見えるそれがターコイズ商会だ。はいよボアいっちょ」
「ありがとう、ほい、釣りはいらない」そう言ってノッチに両替してもらった金貨を1枚渡す。
「太っ腹だなあんちゃん、ありがたくもらっておくよ」
串焼きを片手に、再び人混みの中を進む。
「ん~この串焼きうまい。あのおやじが言ってた通りだと右を見ればわかるらしいが、おぉこれは分かるは」
もはや、ビルといっても差し支えないほど巨大な建造物、入り口にはミロのヴィーナスのような石像が並び、ひっきりなしに人が出入りしている。
「さしずめ白い巨塔ってとこか」
中に入いると、繁華街よりも多くの人でごった返していた。
「いやぁ、デカすぎないか流石に」ノクサス本部で驚いていた自分が恥ずかしくなる。
ずらっと並ぶ受付女王たちはみな整った顔立ちをしている、奥の方では何百という従業員たちが忙しなく働いている。右を向けば巨大な螺旋階段があり高級感を感じさせる、置いてあるもの一つ一つがぬかりなく整頓されているさすがはターコイズといったところか。
「これ、どこにいけばターコに会えるんだろ」
『一階は見た感じ一般人に対しての融資が主体っぽいな、螺旋階段を観察したかぎり上の階を使っている人たちにはおそらく上流階級といわれる部類の人たちだろうな』
「ってことは、上に行くのが正解かな」
早速、螺旋階段を上っていくと突如として場違い感を感じた、まるで、高級ブランド店にジャージで来たような。
小綺麗な身なりをしたおじさんや、野心に満ち満ちた目をしている若者、ドレスで着飾っている女性など、今の俺の見てくれに比べたら、あまりにもキラキラした人たちが俺のことを見て若干怪訝そうな顔をしていた。
『ここは、いるだけで自己肯定感が下がりそうだな。早くターコに気づいてもらわなければ、おれの精神衛生上よくないぞ』
パっと見て一番対応に慣れていそうな受付嬢にコンタクトをとる。
「あのぉ、すいません」
「はい、どうされましたか」
流石はターコの部下、一見なめているとしか思えない恰好をしている俺に対しても顔色一つ変えずに対応してくれる。
「ターコイズ殿と面会をしたいのですが」
「前もって、連絡されていますか」
「いや、全くしていないですね」
「でしたら今日面会をするのは厳しいかもしれませんね」と、この時はさすがになめているのかこいつはというような顔をされた。
しかし、その程度では全く屈しない俺「とりあえず、ターコイズ殿にジンが来たと伝えてもらえないでしょうか」
「承知しました、本日中には伝えさせていただきます」
「いえ、本日中では無くて今取り合ってほしいのですが」
「申し訳ございません、ターコイズ様もご多忙の身ですので」
「そこを何とか、一言ジンが来たって言ってくれるだけでいいので」
どんどんヒートアップしていく押し問答、二人の声も大きくなっていき段々と周りの客や従業員たちもざわざわする中、等の本人たちは周りの目も気にせずヒートアップしていく。
見かねた彼女の上司が仲裁に入ろうとしたその時。
「ベル、落ち着きなさい。私のことになると直ぐに熱くなってしまう癖を直しなさいとあれほど言ったでしょ、本当にそれ以外は完璧なのに」
颯爽と現れ二人を宥めたのは、ターコイズ商会の創設者ターコイズその人であった。
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