異世界を謳歌する
さわやかな風が心地よい。
深呼吸をすれば、生きた空気が肺いっぱいに感じられる。
「さて、初めての休暇だ全力で謳歌するぞ~」思わず意気込んでしまうほどテンションが上がる。
なんだかんだ100年ぐらいいようと思ってはいるものの、まあどうせ飽きて数年で帰るんだろうなぁとかも思ったりしている今日この頃。
もちろん何の目的もなく来たわけではない。
今回の最大の目標は現存している使徒全員に業務の終了の知らせと感謝を言うことだ。
歴代の亡くなった使徒たちには、魂が成仏する前に一旦面談させてもらって直接感謝を言ったりしていたので、今いる奴らにもお礼を言ってやらないと気が済まない個人的に。
といってもなぜか、ほとんどの使徒が俺のことをある程度慕ってくれているので感謝も言わずに一斉に業務終了の知らせを届けても文句なんてまあ出ないだろうが(面談したやつらも泣くほど喜んでいたし)。
俺の寝覚めが悪くなるので直接言いに来たことにした所存である。
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ということで、その一歩目として俺自身勝手に友人だと思っている初期メンの中から一番の親友~大地の王者~の二つ名をお持ちの地龍テーレに会いに来たわけだが。
この洞穴だったはずなんだが。
「ごめん下さ~い」
肌寒い風が感じられる、不自然なほどに生物が存在しない。
野性の勘が本能的に避けているのだろう。
「おぉ、いた」
50メートルを有に超える巨体、見るからに堅固そうな鱗、一般人なら見ただけで漏らしそうな立派な鉤爪、どこをとっても一級品である。
「人間風情が我の眠りを妨げるなんていい度胸だな」こいつの馬鹿でかい図体は相変わらず迫力満点だ。
「おいおいそのお堅い口調似合わないからやめとけって言っただろ」わざと挑発してみたが。
「・・・ん??あぁそうゆう事か」流石俺の親友だもう気づいてしまったらしい驚かしてやりたかったのに。
「相変わらず察しがいいなテーレ」
「我にそんな口の聞き方する奴なんぞお前しかおらんわ、久しいなジン」
「あぁ、こっちも会えて嬉しいよ親友」
「こっちに来るなんて珍しいな、なんか事故でも起きたのか?」
「いや違う、ちょっとした報告に来たんだ」
「今日をもって使徒制度を終了する、長間世話になった」
「なんだそんなことか、そんなかしこまらなくていい、こっちもいい暇つぶしになったよ。それで、これからお前はどうするんだ?人間にでも戻るのか?」
「逆だよ、もう昇進が決定している。今は、昇進祝いの休暇を満喫する予定だ、ついでに使徒たちにお礼行脚するつもりだよ。」
「なるほどね、その第一号が我ということか」
「ん?なんでわかったんだ一人目だって」
「恰好を見ればわかる、そのださいTシャツに楽そうなズボン、どう見てもこっちじゃ浮く服装だ、おまけに汚れてもいないしな、おそらく金も持っていないんだろう。」
「おお流石だねぇ、ただ一つだけ違うな俺のI♡GOD Tシャツはダサくない」
「ダサい」
「ダサくない!」
「ダサい!!」
「ダサくない!!!」
「ダサい!!!!」
「ダサくない!!!!!」
「ああああ!!!!!!もうどうでもいい、いま議論すべきなのはお前がこっちで生活するために必要なものをどう揃えるかだろう」
「そうだな、激しく同意するよ。」
「はぁ~」思わずため息をつくテーレ。
「取り合えず直近のことで言えば、金がないのことが一番の課題だな。他の人員や足の確保については、金さえあれば後は俺のコネでどうとでもなる。」
「なんで人手がいるんだ?お前一人でなんでも出来るだろ」
「俺にこっちの世界の常識は無い」
「あぁそうだったなお前はもう何百年もこっちに居るくせに全くもって馴染まなかったな」
「1000年だよ、地球にいた時の常識が抜けないんだよしょうがないだろ。そんな事より金に換金出来るもの何かないのか」
「あるにはあるが」直径10メートルほどの魔法陣が浮かび上がる。
「龍んのくせに、収納魔法なんて使うんだな」
「当たり前だ」
目の前に積まれたのは、大量の防具やポーションなど。
「なるほどね、お前に挑んで死んだ奴らの遺品か」
「あぁ、いらんから全部持っていっていいぞ」
「ありがたい、これでしばらくは困らん」
コイツを一番に選んだ俺の判断は間違っていなかったようだ。
その後、久々の再会に酒瓶を何本も開けるほど語り明かした。
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「突然の訪問に対応してくれてありがとう」
「そんなに畏まるな気持ち悪い」
「最後ぐらい格好つけさせてくれ、もう暫く会えないだろうからな」
何回も経験してきたことだが、親友との別れはくるものがあるな。
「じゃあな、新しい仕事も頑張れよ」
「お前こそ、あんまり人を殺しすぎるなよ」
「考えとく」
「じゃあな、親しき友よ」
「あぁ」
シャイな奴め、最後まで格好つけやがって。
さて、やっと本格的に俺の旅が始まるな。
最初の目的地は人族最大の国家モノゴロアだ。
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