表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

0 プロローグ

「我が孫、エルトゥラよ。お主の両親とのお主を一人前にするという約束、今ここに果たされた」

「爺ちゃん、あぁ、ありがとう。でも、俺、爺ちゃんに何にも返せてねぇや。魔法の知識も、常識も何もかも爺ちゃんに教わったのに」

「ふむ、それならの、お主を育てることに使った18年間、そのうちにしたかった旅をわしの代わりにして来なさい。そしていつかわしに旅で起こった出来事を教えておくれ。あ、10年以内には戻ってくるんじゃぞ?わしももう歳じゃからな」

「んなこと言って、昨日も森で狩りしてたじゃん。でも、まぁ、そうするよ。いろんなところ行って、いろんなものを見てくる」

「それで良い。今夜は宴じゃ。わし秘蔵の美酒を出してこようかの。お主は料理を出しておれ」

「わかった」


 俺の18の誕生日、爺ちゃんに一人前の魔導士だと認められた日。死んだ父さんと母さんが爺ちゃんに俺を託してから18年。爺ちゃんには感謝しかないや。あ、爺ちゃんが戻って来た。料理を並べないと。


「ほれ、わしがまだ若い頃に龍殺しの褒章でもらった物じゃ。今日は記念日じゃからのぉ。少し贅沢をしてもいいじゃろう」


 そう言って高そうなお酒を2つのグラスへと注いで、一方を差し出して来た。俺はそれを受け取り、乾杯する。


「エル、わしが教えた中で一番重要なことはなんじゃ?」

「魔法とは何か、だろ?」

「そうじゃ、言うてみぃ」

「魔法とは言葉。理不尽に打ち勝つために力ある言葉で世界を変える法。それを人は魔法と呼ぶ」


 この言葉は爺ちゃんが俺に初めて教えてくれた言葉だ。毎日毎日言われ続けていた間にか覚えていた。爺ちゃんは、その言葉を聞き満足したのか、軽くうなづきながら言葉を続けた。


「そうじゃ。じゃが、森の外の魔法はその根幹を忘れ、何かを傷つけるための技術となっているものもある。わしが教えた《真の魔法》は滅多なことがない限り使わん方がいい。目立つと碌なことがない」

「爺ちゃんがそう言うなら…」

「少し、説教のようになってしまったわい。ほら、飲め。お主のための宴じゃ」

「爺ちゃん、俺、爺ちゃんが驚くような旅をしてくるよ。必ず、帰ってくるから。」


 そう力強く答えると、爺ちゃんは驚いたようにこちらを見てくる。


「全く、ちょっと前までは小僧じゃったのにのぉ。時が経つのは早いの」

「爺ちゃんのおかげだよ。ここまで育ててくれたのは爺ちゃんだから」

「言うようになったのぉ」


 その後も、森の奥の小さな小屋での、俺と爺ちゃんの2人だけの宴は続き、2人ともが酔って寝てしまうまで大騒ぎしたのだった。

1 旅立ち 2023/3/12-12:00(予定)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ