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第2話「安息と拷問」

 俺が目を覚ましたのは、模擬戦から二週間後のことだった。


 「目覚めた?」「お目覚めになられましたか?」


 自分の年も変わらない年齢の少女が俺に話しかける。その横には少女の従者だろう、まだ初老と言った感じの男性の姿があった。そしてまたしても知らない天井、おそらく少女たちは長い間は闘技場近辺にいられなかったのだろう。


 「すいませんがお尋ねしたいことがあります。一体ここはどこですか?」


 「ここは王家直轄領ラズベットのルーラル王の別荘です。こちらはルーラル王が娘、フェリス様であります。私はその従者パトリオット・セバスチャンであります。気安く爺とでもお呼びください。」


 どうやらこの世界のセバスチャンは家名で複数いるらしい。


 「ねぇねぇ、あなたはなんで実家から追い出されるくらい父親に憎まれてたの?」


 「!!」

 

 フェリス様の言葉に俺は衝撃を受けた。俺はあの日まで一切父親から憎まれた覚えはないし実家から追い出されたことも衝撃だしで俺は一切この質問に対して答えることができない。


 「どうゆうことだ!!」


 「だからあなたは模擬戦の日、父親から攻撃を受けて気を失ったのはわかるよね?その後わたしたちはあなたを助け一旦あなたをシトラス家に送ったの。しかしその間にあなたの実家ではあなたの外遊つまり家から追い出すことが決まっていて受け取りを拒否された。よってわたしたちは仕方な~くあなたを連れて当初の予定通りここ、ラズベットの別荘まで来たわけ。」


 「すまん理解が追いつかいのですが。」


 「ならもう一度最初から説明して」「それはいいです。」


 頭が受け入れがたい現実に理解するのを拒否している節があるがどうやらそうゆうことらしい。


 「そ、そうだシアンは大丈夫ですか?」


 「すぐ起き上がってあなたのことを心配していたから大丈夫じゃない?」


 良かった俺が追い出された以上、次の跡継ぎはシアンだ。そのシアンに俺のせいで何かあったら気が気でならん。だが大丈夫なら安心だ。寧ろ問題は俺の方だ。俺はいったいどうすればいいのだろうか。俺はそこで名も無き転生神と天照大御神(アマテラスオオミカミ)に言われたことを思い出した。


 『名声を得てください。神の力は信仰や崇拝、意志の力によって高まります。具体的に何をするのかはあなたに任せます』


 『お前と同じ世界に転生させるというのは。』


 あいつらが言ったことが正しいなら、妹はこの世界の何処かにいて俺は妹を探す必要があることになる。俺の前世の記憶によればだいたいの「剣と魔法の世界」には「旅人」か「冒険者」がいる。そうだ妹を探す旅に出るというのは悪くない。シアンは俺のせいで寂しい思いをしているだろう。妹も俺のせいで殺してしまったと言っても過言ではない。妹の転生体が幸せならそれでいいが、もしそうでなかったら俺は妹の幸せを奪ってしまったことになる。これは神芽(いずれ神になるもの)としてあるまじきことだし、何より妹は例え記憶をなくしていたとしても俺の家族なのだ。家族には幸せになってほしいと考えるのは神も人も同じなはずだ。


 「俺、旅に出ようと思います。」


 「突然何を言い出すんですかあなたは!」


 パトリオットさんに突っ込まれた。そりゃそうだ。誰だって人が突然大声で突拍子もないこと言いだしたら反応に困るだろう。


 「父さんが外遊しろって言ってるのでここは素直に従うことにしました。」


 『ハッハッハッハ!ワハッハッハッハッハ!!』


 二人とも大声出して笑いだすところか?ここ。ていうかフェリス様に至っては笑い転げてるし。

 パトリオットさんが笑いながら言う

 

 「怪我も完治していない人がいう言葉じゃありませんよ?」


 意外とパトリオットさんが毒舌なことがわかった。


 「別にいいじゃん。」「治ったら行くってことでいいじゃないですか!」


 俺とフェリス様の反応が一致する。


 「は~あなた面白いね!ねぇフェリスって呼んでよ!」


 「ですけど…」


 パトリオットさんの視線が怖い。人でも殺しそうだ。


 「いいじゃん爺!わたしがいいって言ったの!」


 「ですが姫様…」「いいって言ったの!」


 どうやら絶対に折れなさそうなのでお姫様の仰せのままにということにしておこう


 「わかったよフェリス。」「よろしく!ハルト!」


 どうやら俺はこれから姫様のおもちゃにさせられるらしい。


 「ではハルト様はこの屋敷で旅の準備をしながら療養するということで。」


 「そうですね。」


 「ねぇねぇハルト!わたし直々に屋敷の中を案内してあげる!光栄に思うといいわ!」


 「ねぇ!ちょっと!そっちの手はまだ痛むんだけどぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁあああ!!」


 俺はそれからフェリスに屋敷の中を半ば強引に案内させられ、俺の病室と化している客間に帰ってくるころには、クタクタのへとへとになっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 フェリスは俺の怪我が完治するまで毎日俺に会いに来てくれた。と言っても別にフェリスが俺に甲斐甲斐しく看病してくれたわけではなく、俺は毎日姫様のいたずらやわがままに付き合わされることになっていた。

 ある時は頭にカエルを乗せられ、またある時は見えない所から出てきたり、またある時は「爺がうるさいの!」と愚痴に付き合わせられたりと楽しく過ごしていた。

 妹と重ね合わせていた面もあるかもしれない。もしくはシアンと。

 俺は療養中のいい気晴らしになったし、フェリスにはいい遊び相手ができたとパトリオットさんが言っていた。

 これまであのいたずらに付き合わされていたと考えると心中お察しするが。

 こうして俺はパトリオットさんから動いてもいいと言われて今日、俺はフェリスと一緒に街に出て旅の備品(お代は外遊ということで実家が出してくれた)を買いに行くのだが…


 「ハル!早く行こうよ!」


 いつの間にか俺にあだ名まで付けてた程、仲良くなっていたフェリスがもう痛まなくなった腕を引っ張って俺を急かす。多分本人である俺よりこの買い物を楽しみにしていただろう。どの世界でも女性は買い物が好きらしい。


 「わかった、わかったから。というか一国のお姫様がそんな簡単に外に出ていいのかよ!」


 「いいのいいの!わたしは兄様姉様と違って自由に外とか出られるの!」


 そうなのか。王族っていうのは不自由なものだと思っていた。


 「そんなことよりとっとと行くよ!」


 そう言ってフェリスがドアを開けると俺がゆっくりしていた時間も季節は移ろっていたことがわかった。それもそのはず確か模擬戦の日はうだるような暑さの7月の10日だったはずだ。それに対していまは9月の27日、丸二月も俺は引きこもっていたことになる。庭の木は紅葉を始めてあの闘技場を包んでいた熱気は既に遠くに消え去り、空は爽快な秋晴れに包まれている。そして何より


 「涼しい…」


 「ここラズベットは知る人ぞ知る名避暑地、大きな山があるせいで人は集まらないけどね。」


 おいおい、俺をそんなに舐めないでくれよ。


 「それは知ってる。」


 「・・・」


 「ここラズベットはシトラス家も五年に一回は来る御用達の避暑地だ。シトラス領は山に囲まれているせいで酷く暑く、夏は模擬戦など余程のことがなければ避暑地に行く。ちなみに蚕がよく取れるため紡績業が盛んで名物はウインナー、それに使う豚肉や牛肉の一部はシトラス領が供給している。」


 「・・・し、知ってるわよそのくらい!」


 噓つけ、肉の供給元とか絶対知らなかっただろ。


 「そんなことよりとっとと行くわよ!」


 俺はお姫様のご機嫌をまたしても損ねてしまったらしい。フェリスは走って門の方に向かっていってしまった。俺もフェリスを追って駆ける。俺たちはそのままの勢いで外に出た。


 ラズベットの街は王家と名門シトラス家が援助していることもあって、道は石畳で清掃も行き渡っている。更には貴族の屋敷のお膝元にしかない炎魔法が組み込まれている街頭まで置いてあった。街の市場は活気に満ちあふれていて商魂たくましい商人たちが自分の店に呼び込む声や、昼間からウインナーを酒の肴にして吞んでいるだろうオヤジたちの声、買い物に来ているだろう客の話し声その他様々な話声で満ちあふれている。


 そうやって俺が街並みを楽しんでいると突然フェリスが歩を止めた。どうやら俺を案内したい場所があるらしい。

 

 「ここが私のおすすめの店!『マルクスの雑貨店』よ!」


 マルクスの雑貨店の外見ははっきり言ってシュールだった。二階建ての一回でヘビが干してあると思ったら二階では果物が干してあるし、どの横では明らかに戦場に着て行ったら浮くだろうデコレーションが施された数々の武具、その奥には異世界でたまにいるタイプの筋骨隆々のオネエ。


 「帰ります。」「ちょっと!なんですぐ帰ろうとするの!」


 身の危険を感じるからだよ!ほら筋骨隆々のオネエが猪みたいなスピードで治ったばっかの俺の骨を折ろうとしてきてるじゃないか!


 「あら~いらっしゃ~い」「ぐああああああああ!」


 折れる!体中の骨という骨がミシミシ言ってる!振り回されてる!


 「は、はなして…」「あら?ごめんなさい!?」


 俺が数ヶ月振りに三途の川見学(三回目)に行こうとする寸前、俺は解放されることになった。


 「私はマルクスの雑貨店、店長マルクス・レオン!どうぞ御贔屓に♪」


 マルクス・レオンと名乗った筋骨隆々のオネエは俺にとってだいたい予想していた受け入れたくはない事実を野太い声でたたきつけて魔法少女もがぐやといった感じにバチコーンとウインクをした。

 俺の正気をこれ以上削るのはやめてもらいたい。


 「いや~このようなカワイイ男の子見るとワタシ、ついああなっちゃうの♪」


 「ああなってたまるかぁ!!」


 「ハルト、マルクスはねこれでも一流の錬金術師で常連客も多い名店なのよ?」


 「いやねぇ、フェリスちゃん錬金術師じゃなくて魔女でお願い♪」


 妙に高いテンションに連れて来たフェリス自身も若干引いている。


 「ところで貴方のお名前は?」


 「ハルト、ハルト・シトラスです…」


 「あなたのようなカワイイ男の子は大好物よ♪ちょっとサービスしちゃう♪」


 どうやら俺はここで買い物しなくてはいけないらしい

雑貨屋の話の続きの前に人物設定について書こうと思います。

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