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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1990年代

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その37 シルバーシート   夢

   シルバーシート

               

たいがい空席。

他の席が埋められて

疲れを覚えている人が

遠慮勝ちに腰をおろすが

それも老人とは限らない。


私は老人だからと

そこに座る人など

めったにいない。


老人であることで

優先されるなんて

尻のあたりが

むず痒くなるような。

冷遇されるのなら

日々の実感だが。

              

へっ

シルバーシート、

そんなもので

だまされるか。


その空席を

目の端にかけて

この国の老人たちは

意固地に足を踏ん張っている。




   夢

              

また空を飛ぶ夢を見た


なにかじめじめした

陋屋の連なり

その長屋が廊下になり

木造の校舎の中を歩いていて

翳りのなかに子供達が

埴輪のように立っていた

哀れむ思いで通り過ぎながら

ふと飛ぼうと思った

手には愛犬のリードを握っていて

散歩の途中というところか


地を蹴ると

案の定、抱える愛犬は重く

地上一メートル辺りを

フラフラとしたが     

それでも子供達の歓声が

聞こえたようだ


やがて

調子が出てきて

ドルフィンのキックごとに

ぐんぐん高度は上がり

(あんなに気持のよい上昇は

 久しぶりだった)


見下ろす

黒い沼のような地上に

我が家の位置を

探そうとしていたのだが


見つからないうちに

これも夢を見て

泣くのか笑うのか

短く切れる妻の声で

目を覚まされた









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