表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1970年代
9/291

その9 鉢植えの一つについて

それは

丈三十センチ程の鉢植え


母が私の部屋に置いた

名を尋ねたが

知らなかった


暑い日々

水を注げば

安らぎが生まれた

窓際の書棚の上で

大輪の紅花を

咲かせ続けた


陽を求めて

戸外に出された

葉の緑は深まり

夕陽は紅花を燃やした


レストランの入口に置かれた

雪が降り

葉に積もり

それでも夏と変わらず

鮮やかに咲く紅花を

不思議な気持で見ていた


その冬一番の寒い日が過ぎ

気がつくと

暖房のきいた店内にそれはあった

葉も花も落ち

枝と幹は干からびていた

すぐに水をやった

敷き皿に溢れた水は

一週間程で乾いたが

変化はなかった

隣で

一緒に入口に置かれていたゴムの木が

萎れていた


寒さにやられた

枯れてしまった

私はそう思った


春が近づいてきた日

閑散な店内を

所在なく歩いていて

ふと鉢植えに目をやると

干からびた枝幹のあちこちから

黄緑色の新芽が出ていた


私はしばらく

その前を動かなかった


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ