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その22 妻 銀の椅子
妻
趣味のサークルの宴会から帰って
酔った勢いで
べらべらしゃべっていたが
ふと
テレビの何でもないシーンに
涙を流したりするので
「なんでも感動やね」
とからかってやった
飲みすぎて苦しい
と言うので
紅茶を淹れて持っていくと
もう寝てしまっていた
一日に疲れ果てた
という
畳に押しつけて歪んだ顔
と
腹に響くような鼾
銀の椅子
祭りは終わった
鈍く光るレールと
平行するプラットホームの
遠い端に
椅子がある
青白い夜の下の
待合室の明かりの中に
銀色に浮かんでいる
すべてのものに別れを告げ
涙が刻んだ微笑を
頬に浮かべて
私は歩いていく
その椅子に座るために




