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その17 ノドを通らぬ話
義父は
ミャンマーのジャングルで戦い
敗戦後は
英軍に武装解除され
ラングーンの収容所に入れられた
帰国船への
乗船が決まったとき
嬉しくて食事がノドを通らなかった
数日して
出港が中止になったとき
失望して食事がノドを通らなかった
(部下の戦意昂揚のため
英軍の捕虜を斬った義父は
戦犯追及を懼れていた)
結局
帰ってこれたのだが
タラップを上るとき
手をかしてくれる
(栄養不足で捕虜たちは弱っていた)
日本人の看護婦が
(つまり久しぶりに見る日本人の女が)
天使のように美しく見えたという




