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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1990年代

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その9 転居


二つの空間があって

人間はなるほど

動くことはできるから

一つの空間に現れ

また他の一つに現れる

ことは可能なのだが


この空間は

あの空間の

否定によって

成立していたのだ

この空間に居たのは

あの空間を断念し

切り離していたからだ


あの空間から

この空間に戻ると

白けた光の中に

この空間に居た私が

ゆらりと立ちあがり

ブラインドを上げたり

頬杖をついたりする


そして

別れを告げる


〈お前を捨てるわけではない〉

と私は応じる


〈ただ 私は今

 あの空間にも

 愛をもって入れるようになったのだ〉


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