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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1980年代

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59/295

その41 朝―六時四十分の人々

   (1)


まだシャッターを降ろしたままの

商店街のアーケードの下を

私と逆方向に歩いてくる

初老の婦人


サーモンピンクのブラウスを

あんず色のタイトスカートにおしこんだ

やせぎすの体

厚化粧に

しわの深さが浮立つ顔


視線をそらしつつ

前のめりに

せかせかと歩く


   (2)


いつもきちんとした

グレーのスーツを着て

白塗りの清楚な自転車で

出勤する娘


私の自転車を

音もなく追い抜いていった時

いい香りがした


鳥居のある道から

本通りに出てくる彼女


人も車もまばらな

アスファルト道の五十メートルほど先を

急がず

といって怠らず

一定のリズムで

彼女はペダルをこぐ

すっと伸びた背

その半ばまでの黒髪


私が自転車置場に着く頃

彼女は駅の石段をのぼっている

肩からバッグをさげて


ホームの

いつも決まった場所に

彼女は立っている

線路際からかなり後退して


まっすぐ前を見つめる横顔に

視線を当てても

瞬きばかりで

こちらを見ない

そのくせ不意に

ホームに降りてくる私を

見上げている目に

ぶつかることもある


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