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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1980年代

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その36 ぽかん   酒と教訓

   ぽかん


この世界は

私の生きる世界ではない


生きたい世界は

遠くにある

いつも


それで

ぽかんとしてしまう


眼前のこの世界には

この志向を受けとめるものがない


夢を語っているつもりはない

のに

夢を語っている感じになる

いくら見回しても

現実には(まだ)

どこにもないことなのだから


遠い

いつも遠い

もう十数年


定着したようですね

自他に虚偽を語って

生きてきた人のように

不意にぽかんとする

心の癖が




   酒と教訓


酒に酔うと

言いつのるらしい


口汚なく

人を罵るらしい


自制が外れて

ここを先途と

噴き出すのだろう


―なぜあなたはそうなのか

―なぜこうせずにそうするのか

―言う事としている事が違うではないか、事実を見ろ、事実を

―なぜその関連がわからないのか

―偽善者

―形だけの人、口先だけの人

日頃心の中で

そんな呟きをくり返しているので


どれだけ言っても

理解されることはなく

翌日は

酒癖が悪い

という評判と嘲笑ばかり


おまけに何を言われても

こちらには記憶がない


記憶回路が切れるほど

頭脳を白熱させて

何をしているのか


酒を飲む時ぐらい

気を抜いたら


所詮酔ってする話に

何の意味がある


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