表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1980年代

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/295

その31 尿   根源からの出発


   尿


危篤の病人の

ベッドの脇に吊るされた

ビニールの袋に

管の先から滴り

たまっていく黄色い尿

この量の増大が

危機脱出の指標という


生命(いのち)とはつまり

尿がたまっていくこと


自我という錘を負って

喘ぎ動く

あれら肉体達の(うち)にも

しとしと滴り

たまっていく尿


不断に駆り立てられ

ひきまわされる意識を

隠蔵する

肉体の暗所に

しとしとと

尿が落ちている


膀胱に

毎秒たまっていく尿

生存することの

それ以上の意味



  根源(もと)からの出発


爽やかな色彩の

朝の列車に乗って

窓から

白い陽差しが射しこむ

清潔なシートに座り

深呼吸をして

目を細める

線路前方の輝きから

額に吹きつけてくる風

ああ、することがある

今日からはすることができる

明日も明後日(あさって)

並び待つ日々は

夢に生きる生活


早朝の列車に乗るなら

すべてを捨てて

そんな出発(たびだち)をしたいと

幾度か思ったものだ

出勤の

重苦しい車両のなかで


その黄金列車で

どこに着くつもりだったか

白金のレールも

闇の中に溺れていくのに

薔薇色の到着地も

やがて闇にのみこまれよう


なぜなら

腰をおろすと間もなく

座席を黒く染め初めているから

自己という暗黒から

流れ出す闇が


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ