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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1980年代

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48/295

その30 呼吸に関する断想 2

    

   思念


私の呼吸を奪うものに

思念がある


つまりこうだ

人と話をしている時

相手に関する何かについて

私の理知が

ある思念を抱く

すると

恐怖が先まわりして

それが桎梏となることを告げる

その思念は早く捨て去った方がいいと

あるいはこうだ

桎梏となる思念が生まれる()()

そういう思念がやがて生まれるという

恐れにみちた予感があり

理性はケイレンして

実際にその思念を()()()()()

結果は同じだ


具体的にはこうだ

それが心の和む相手であれば

桎梏となる思念は私にこのように囁く


俺を口に出して相手に言え

でないとお前は落着けない

貴重な語らいの時間が

不毛な苦悶のなかで

溺死してしまうぞ

言わないでおくなんて

そんな遠慮をしていて

この人と心からの会話ができるのか

言いたいことを言えよ

それが誠実と言うものだ

気がかりは早く吐き出してさっぱりしろ

この人と語りたいことは他にたくさんあるだろう

ほらこの白々しい雰囲気がいけない

お前の内部の葛藤が生み出す

この不自然な間合いが

このままだと別れた後

苦い後悔が

痛い自責が

お前を苛むぞ


心を和ませない相手であれば

こんなふうに


俺を口に出して相手に言え

でないとお前の腰は据わらない

腰が据わらなければ

お前は敗北する

相手のペースに乗せられ

うまく料理されてしまうぞ

早く吐き出して

頭をすっきりさせろよ

冷静な落着いた精神で

こいつと向き合うんだ

的確な言葉のパンチを

ビシビシと叩きこむのだ

言おうか言うまいか

その逡巡がいけない

ほらまた意味も考えず

相手の言葉に承認を与えた

このままだと別れた後

屈辱感がお前を苛むぞ


一方、頭頂のあたりでは

もう一つの思念が

こう囁いている


それを言うのは

くだらないことだ

相手の気持を傷つけ

自分の心の安定を害い

会話を表層的なレベルに止めるだけだ


あるいはこんなふうに


それを言うのは

くだらないことだ

相手に自分の小ささを

他愛なさを感じとらせ

つまりは自分を見くびらせるだけだ


葛藤を逃れるために

私は苦し気に口を開く

だが言ったとしても

自由にはなれない

言ったという事実が

今度は呪縛となる

そこから

次の桎梏となる思念が

生まれる


どうすればいい

呼吸を失わぬためには

二つの思念に引き裂かれぬためには


眺めること

二つの思念がぶつかるとき

どちらにも与せず

自分に無縁なものとして

眺めること


浮かび来る思念を

アブクと観て

その生滅を数えること


観察することによって離れ

二つともに捨てよ


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