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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1980年代

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36/295

その18 便所のうた

クソしている間は

シッコウユーヨ

クソが落ちていくごとに

憂き世を脱していく気分

心も身を離れ

ふわふわと浮き上がる

頭の上あたりから

身の来し方を眺めれば

曲折に生じた亀裂に

さびしい顔が貼りついている のに

まずは、まずはと頷かれるのも

便所の功徳というほかはなく

見るな、見るなと

飛んでいくのは中央アジア

ステップを吹く風は

頭骸の中まで吹きぬけて

ああ、(いき)(かえ)るにちがいない

シルクロードのじいさんが

髭を歪めて笑えば

刻まれるシワの美味さに一献

ブラジル娘の白い歯列は

享楽の輝く門標

月光の砂漠は

絶えてしまう 安らぎを

明示してはくれまいか

休みが欲しい

一日でいい 一月でもいい

一年でも 三年でも結構だ

職場の隣りの席で

怒っている奴

あの馬鹿が、と鼻で笑うと

あれも悲しい と

湿った股グラが見えてくるのも

憂き世を離れた徴証か

ホトッと 失くしていた自分が

膝の上に落ちてきた

抱きしめて涙を灌げば

生きる力も湧いてくるぞ

ひっそりと

眼がある

湛えた涙で

俺を責めている

ああ

ハッピネス

僕らの幸福


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