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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1980年代

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その16 道   ウェイターの不幸な楽しみ

   道


 (砂を盛った板を傾けたように

  地上のものはすべて流れ落ちていった)


闇の中に白く浮く

乾いた道


歩かねばならないのだが

この道には

草ひとつ生えてない

見わたしても

見えるものは

道だけなんて


舞い降りてくる鳥も

頭をつついて

血を流させるだけ


生まれたとき

僕はこの道の端に落ちた

あのころは

たのしい顔も

空にぶらさがっていたが


叫ぶ

叫ぶ間だけ声がある


隣りの闇から

なつかしい声が

聞こえたような気がした



   ウェイターの不幸な楽しみ

 

(なにしろ一日、人様の姿を眺めさせられるので)


いい女ほど

男の視線には敏感なもの

たとえそれが

ウェイターの目だとしても


腰をずらし

脚をくみかえ

うなじを撫ぜ

髪をかきあげる


あのテーブルのミニスカート

注がれる視線を

めいっぱい吸いとって

向きあった彼に微笑んでいる

まるで生気の源泉は

あなたの目だけという顔で

                            


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