表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1980年代

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/295

その15  弁明

 あなたの沈黙が伝えてくる失望、おそらくは怒り、総じてあなたが受けた傷。


 わたしは打算的な人間ではありません。私は少しばかり気苦労をしすぎたのです。まだ稼ぎもしない若い頃、金銭の事のおもさを想像によって感受性に焼きつけてしまったのです。火が水に対するように、夢見がちな心はその破壊者に過敏でした。傷はケロイドとなって、今もわたしの口をひきつらせます。金銭がからむ時のわたしの心の痙攣―それをうち破って出てくる言葉は装飾をつける余裕がないのです。スポットライトの中でセリフを忘れた役者のように、私は世界を見失うのです。闇に向かって裸で投げだされる言葉の無残。

 あなたとわたしの痛みの実在。


 わたしは打算的な人間ではありません。どちらかといえば精神的な人間です。いつも火ばしでつつかれている精神。痛みに歪んだ精神は、かたわな、屈折した表現しかできなくなりました。かなえられたら! あなたが私の苦痛まで降りてきて、そこに溜っている涙を掬うことが。

 それはかなわぬまでも、せめて感じてください。私のくぐもる声に。同じ言葉の芸のないくり返しに。


 受話器を置いたあとに訪れる煩悶。あの申し出をしたとき、わたしには善意のほかになにもなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ