3/291
その3 恋の悲しみ
恋の悲しみは
赤軍兵士の恋
その兵士は
同志である女兵に恋した
素直で 献身的で
聡明で 優しい
素晴らしい女
恋は深くなるばかりだった
女兵は彼に優しかった
女兵は誰からも人気があった
女兵は誰にも優しかった
兵士の恋は熾烈に燃えた
彼女には恋人がいると
兵士は聞いた
その男の顔も名も
兵士は知っていた
話さえ交わした
彼も同じ隊の
赤軍兵士
女兵は
彼にも 兵士にも
同じ様に優しかった
兵士は信じた
彼女は俺だけを愛していると
兵士は女兵を深く恋した
前線 銃弾の飛び交う塹壕戦
一人の兵士が 銃弾に仆れた
女兵が駆け寄り 号泣した
兵士はそれを見た 彼だった
撤退が始まっていた 女兵は動かない
兵士は
女兵が 彼だけを 愛していた 事を
知った
だが 兵士は
女兵を 愛していた
敵が迫り 着弾は正確になった
俺は ここで 死ぬだろう
兵士は 女兵を逃がそうと
側に近づき 敵弾に仆れた
恋の悲しみは
赤軍兵士の恋