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その10 垢抜き 黔首 若かりし頃
垢ぬき
首ねっこつかまれ
冷たさにちぢみあがり
つぶつぶがぶつぶつのように膚を覆い
ヤットコで抓まれ
ぷちんと皮膚がやぶれ
肉が鮮紅色に露出し
その肉を揉まれ
硫酸の水がしみこみ
世界が遠くなり
白濁のなかをさすらい
涙と体液が滴り
渇き きる
アカヌケシタナ
ウン、ヨクナッタ
黔首
ここは底
ここはヤスリ
夢がすり減り
白髪が増えるところ
人が平凡になるところ
太古より寸分も変らぬところ
地べたの
穴の一つから
動く首だけもたげて
夢の高みを望めば
高みとは僥倖であった
あるいは
うそ であった
こころの内側まで
まっ黒にして
はたらき続け つづけて
黒さも黒光りするに至って
積みあがり
そそり立つ
黔首の屍の大黒柱
に嵩を加える
栄光
若かりし頃
もの思いに
心を奪われ
風呂での洗髪さえ
覚えていないしまつ
懸命に蹴るが
回転輪がまわるだけ
宙を翔んで
白い足裏 ひらひら
どんな曲芸でもござれ
夢と現実の等価交換でも何でも
地面にひらく目
ひらく口
落ちてこい
いや落ちてくるサ
もうすぐ
もうじき




