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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1980年代

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19/295

その1 夜   ミリンダ

   夜


ベトナムでは

あの中越国境の村では

男達は女達は

子ども達は

どんな息をしているだろう

侵略者と向き合って


屠殺場の恐慌から

危うく脱した

カンボジアの人々にとって

迎送する時は

どんな相貌をしていることか

あの地獄を

二度と現出させぬために

確実に積み上げねばならない

日々


列島の片隅で

わたしが希望を失おうとする

この同じ時刻に




   ミリンダ


それはフィリピンのダンスが売りものの店

きみはリーダーで

目のあたりはそっくりだが

まだ幼く線のほそい妹や

グラマラスな従妹

他に四人の娘をひきいて

南の島からやってきた


ショーが終って

踊り子たちは客席をまわり

ボクらのテーブルに座ったのがきみ

宿舎のルームナンバーを

知っているというボクの連れが

アイラブユーを連発したが

Don`t touch me. You are not a gentleman.

あかい唇をとがらせ

黒目がちの目を大きくして

きみは通りを歩く娘のように

気位が高かった


ミリンダ

きみは弟や妹の多い十九才の学生

メディカルテクノロジー専攻

恋人はフィリピンで待つ二十才

ミリンダとは処女性の意味で(たしか)

瞳の美しさをほめると

日本人はめがねが多いと

ボクのめがねを見てニヤリ

ビザの期間は半年で

きみらが去ると別のグループがくる

フィリピンの海はきれいだけど(やっぱり)

意外にきみはカナヅチだった


ショータイム

小柄だが均斉のとれた肢体

大きな目で魅惑的ににらみ

唇から白い歯がもれる

浅黒い膚に

南海の渚を手をつないで走る

若い男女の笑い声がきこえ

遠い昔ファンだった

シリーズものの青春映画の

ロマンをボクは反芻していた


フィリピンには仕事がない

ここでもらうお金は

向うに帰れば大金なの

日本人のホステスが

知り顔でそう教えた


つぎにボクがきたとき

踊り子らは母国に帰っていた

後のチームはまだ来ていず

店内は静かだった


最後のショータイムで

彼女らは涙をみせたらしい





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