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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1970年代

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15/295

その15 旅  (四)御来光登山


午前0時半起床

一時集合

標高七〇〇メートルのYHから

一五〇三メートルの雌阿寒岳山頂に登り

来光を仰ぐ


前夜のミーティング

ヘルパーの“説明”抄


― 女性の方は男性より三十分早く起こします。なぜそんな差別をするのか? この三十分にどんな意味が込められているのか? 基礎工事が大変でしょう。(白粉を塗る手つき)しかし登山は汗をかきます。汗をかくと工事が崩れます。恐ろしい事が起こります。その顔で後ろをふり返る。そこへ運悪く懐中電灯の光があたる。(驚愕の表情)転落する人が出てきます。やはり素顔が一番美しい。

― 女性には懐中電灯を渡しません。なぜか? 女性は利己主義なんですね。自分の足許ばかり照らす。(下を向いて、懸命に足許を照らすしぐさ)三人に一本くらいしか懐中電灯はありません。他の人の足許も照らしてもらわなければ困りますから。その点男性は、さすがというか、バカというか、自分が落ちかけている事も知らずに、シッカリ他人の足許、野郎はどうでもいいんですね、女性の足許を照らしてますから。(何度も頷く)

― 女性の方、なるべくスカートはやめてください。なぜか? 登り初めて三時間もすると疲れてきます。その頃男性の中に自己矛盾に陥る方が出てくる。(苦悶の表情)どうしてオレは夜中に起きてこんな苦しい思いをしているんだ、どうしてこんな目に合わなきゃならないんだ、と自分で自分に納得がいかなくなる。前を見るとスカートがチラチラする。えい、面倒っと(スカートをめくるしぐさ)中を懐中電灯で照らして、手っ取り早い御来光! という事になるからこわい。

― 頂上とここではかなり温度差があります。氷点下まで下がります。寒くならない服装をしていく事。頂上で鼻水を流すと、くっきり銀河鉄道が走ります。(二本の指を鼻の下におく)

― きれいですよ、ほんとに、雲海の上にぽっかり浮かんでくる太陽は。(ため息)よく晴れてる日なんか、知床半島、オホーツク海まで見えます。飛び魚がキラキラ跳びはねてます。南を向くと襟裳岬、森進一が手を振ってます。(手を振る)真面目な話、登山の苦労が全部消えます。

― 午前0時の時点で、星が出て、風がなければ登山決行。中止の時は起こしませんから、そのまま寝ていてください。いつだったか眠っているヘルパーを叩き起こして、どうなったんだと聞かれたホステラーさんがいましたが、皆さんを起こして集めた上で、エー(見回すしぐさ)今回は中止です、と言うわけにもいきませんから、起こさない時は中止ですのでよろしく。こちらも日頃の睡眠不足をイジコク取り返してますので、起こさないでね。


笑い続けて

頬の筋肉が痛い

人を食った話しぶりだが

彼も二十四、五の青年

六割程の若者が

登山参加を申し出た


さすがに声少なく

若者達は集まってくる

胴震いとあくびが交互に出る

三時間ほどの仮眠だ

昨夜のヘルパーが前に立ち

指示を始める

ミーティングの延長の笑いが

若者達の頬を走る


渡された懐中電灯を点滅させ

互いの顔を照らしてふざける

冗談が交わされ

笑い声が起きる

闇に消える道を

さあ出発


      

   YH……ユースホステル

   ホステラー……ユースホステル利用者


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