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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
1970年代

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その14 旅 (二)少女   (三)若者達

    (二)少女


後部甲板で

少女はただ

見つめている

灰色の波

押し寄せる霧


その視界の向うに

何か置いてきたのか


それとも

旅するおとめの

あどけない感傷か


サハリンと書いた

パンフレットが

ジーパンの尻に下がる

ショルダーバッグから

覗いている


風が髪を持ちあげ

頬にまといつかせる

それを口に含むように

唇を締め

少女は長い間

甲板に立っている




   (三)若者達


カニ族と呼ばれる

若者達の群れ

汗をかき

ほこりをかぶり

日に照らされ

雨に叩かれ

足指の爪をつぶし

山から海へ

海から島へ

島から街へ

遍路のように

北の国を

右往左往


知らない同士が

どこから来た

どこへ行く

で話し始め

意気があって

ルート変更

一人旅も

ここでは孤独になれぬ


島で別れた友と

ひょいと再会する

はるかな街


ユースホステル

皆集う夕べ

声はりあげて歌い

人気者はギターを弾く

あちこちに生まれる輪

話しかけろ

ぶつかれ

旅の価値は

友をつくること

未知の人生を知ること


二段ベッド

おっかない上り降り

一人誰とも話さず

頭まで毛布をかぶり

横になっている若者


到着 すぐに掻き込む夕食

急いで入浴 手揉みの洗濯

くつろぐ間もなくミーティング

ホッと一息で消燈

六時起床

次の世界へ

移動 移動


真新しかった

靴・ズボン・リュック

肉体まで

旅に染まり

くずれ

強くなる


連れが言う

旅行じゃない 旅なんだ

ショウウィンドウに映る

見知らぬ風来坊

それが自分だと気づく頃

本当に始まる旅


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