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その25 ツムジ
気の小さいツムジ*は
脚を揃えて
横倒しに寝ていても
まだ目を開けている
顔の前三十センチほどに
ボールがある
視界の裡にも
ボールがあるはず
そっと
ボールを取る
案の定
目は
俺の手の動きを追う
壁に投げつければ
こいつはきっと跳ね起き
三、四度床を空掻きしても
ボールを捕らえようとするだろう
こいつの股関節は
かくかくと鳴る
無理な動きをさせては……
俺はボールを置く
元の位置に
トイレに行って
戻ると
ツムジはボールを咥えている
誰にも渡さないと
* 愛犬の名




