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その16 テレビ房収監
寝そべって
テレビを見ていた君を
衝迫がまたも突き上げる
無力感は覚えながらも
やはりこれが元凶なんだからと
君はむっくり起き上がり
テレビに背を向けて
妻に語り始める
おい
貴重な時間を
テレビに取られまいや
俺たちの生活のことを話そう
この部屋を見回せば
いろんなことが浮かんでくるぞ
このサイドボードの上の写真
もう何年も前から置いてあるが
ああ、昨日のことだ
この安楽椅子の上に
ワラシが座ったんだ
この写真とおんなじようにな
中二階にワラシを初めて上げたんだ
この椅子があるだろ
俺が座る前にさっと座ってしまって
動こうとしないんだ
覚えているんだな
アパートに居た頃
この椅子によく座っていたことを
俺は座るところがなくて
妻は微笑んで
二言三言
夫に返した
が、それから
夫は思案顔になり
妻も番組の続きを見ないわけにはいかない
間違っている
と君は呟くが
支配に服して
またテレビの前に
寝そべってしまう
*ワラシは飼い犬の名




