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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
2000年代

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119/296

その16 テレビ房収監

                                  

寝そべって

テレビを見ていた君を

衝迫がまたも突き上げる


無力感は覚えながらも

やはりこれが元凶なんだからと

君はむっくり起き上がり


テレビに背を向けて

妻に語り始める


おい

貴重な時間を

テレビに取られまいや

俺たちの生活(くらし )のことを話そう

この部屋を見回せば

いろんなことが浮かんでくるぞ

このサイドボードの上の写真

もう何年も前から置いてあるが

ああ、昨日のことだ

この安楽椅子の上に

ワラシが座ったんだ

この写真とおんなじようにな

中二階にワラシを初めて上げたんだ

この椅子があるだろ

俺が座る前にさっと座ってしまって

動こうとしないんだ

覚えているんだな    

アパートに居た頃

この椅子によく座っていたことを

俺は座るところがなくて


妻は微笑んで

二言三言

夫に返した


が、それから

夫は思案顔になり

妻も番組の続きを見ないわけにはいかない


間違っている

と君は呟くが


支配に服して

またテレビの前に

寝そべってしまう



   *ワラシは飼い犬の名




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