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その14 千一 居間
千一
休日の午前
音楽を聴く
窓の外は雨
ふっと意識がクリアになる
懐かしい感覚
正面の家具の下部に
数字がいくつか刻まれている
見慣れたはずのものに見出だす
かって見なかったもの
発見は
この時間の賜物
追い立てる
流れから落ちて
垂直に沈めば
千年も一日
一日も千年
居 間
歳をとると
友達はいなくなる
ポツンと
女房が言った
あいつとも
何年会わないか
四、五年前までは
年に一度は会っていた
どちらからともなく
誘い
誘われ
これっきりになることを
恐れるように
そんな関係の
無意味さが
意識に上るようになったのか
歳をとると
意味を問うようになるから
会わなければ
会わなくてもいいな
そんな呟きを
胸の中に聞きながら
確実に深まってくる
孤独の気配を
感じとっている




