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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
2000年代

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105/295

その2 朝   風を綯おう

  朝

               

これだけ孤であっていいのか

朝日にきらめく静かな海の中で

抱き合うとき


水の色を見透かす

透過する光のゆらめきを

空の色の縞を見詰める

そのあわいの微妙さは

確かに現実


孤は

繋がっていない個は

現実を保証しない


唇を吸う

濡れた髪を噛む

                

抱き合う

一人に(ひと)がいる現実

を踏みしめる




  風を綯おう    

     ー二〇〇〇年総選挙

               

風は止んだのか

穴蔵から這い出す

望みを与えてくれていた風は


ずっとこのまま

縮こまっているほかないのか

暗い穴の中で


広い野を

縦横に走り回りたい

陽の光を浴びて


黒い突風に

吹き返されたのか


冷たい穴蔵の中で    

手足を縮めているのは

もうたくさんだ

一度灯った希望の火を

吹き消すことはできない


隠れ谷の

腐臭を放つ沼沢地は

確実に干涸びつつある

ピシピシと広がる亀裂が

吹き上げる悲鳴

それが突風だ


風は止んでいない

縮かんだ手足が痺れ

切り刻まれた心が疼くかぎり


風を綯おう

綯い合わせて

太い綱をつくろう

鮮鮮と陽に輝く    

あの広大な沃野に

俺達を引っ張り出してくれる

太綱を





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