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その10 窓際の椅子で 清水バス停
窓際の椅子で
暖簾を吹き上げ
棕櫚竹の葉をそよがせ
麦茶を飲む私に
風が吹く
ブラインドとともに
光の縞が揺れ
テーブル毎に
吊り下げられた
ペンダントも揺れ
垂れ下がる
白い空
地表にへばりついた
灰色の街
その間を
六月の陽は埋め
風の中で
もう一度
麦茶を流しこむ
これっぽっちの幸福
清水バス停
見上げれば
球場の建物が
青空の中に
屹立していた
齧り始めた
勤め人のくらしを
舌の上に転がしながら
アスファルトに
跳ねる陽差しを
眺めていた
風が
横に立つ女性の髪を
さらさらさらと
光らせた
〈この髪のようでありたい〉
路面の輝きが
空に溶けてしまうところ
光を散らしながら
バスが近づいてきた




