優しいおばさん
あれだ! あの変な女に貰ったお札が原因か。しかも、寝る前に異世界に行きたいなんて考えたから……。まぁ、夢って可能性もあるからな。頬でもつねってみるか。
「痛い……。マジで異世界に来たの?」
どうやら、現実らしい。ついに、異世界に来ることができたのか! でも、お金はどうしよう。運よくポケットに異世界マネーが入ってたり。ポケットを漁ると、お金らしきものが……。
「いや、ここって日本のお金を使うことが出来るのか?」
これ以上グダグダしていても埒が明かない。とりあえず、お金のことだけでも誰かに聞いておかないと。
ただ、この国の言語がわからないから、どうやって聞こうか。ジェスチャーで通じるか?
「最近は、晴れの日が多くていいねー」
俺は見知らぬおばさんに声を掛けられた。
「そうで……す……ね……?」
何でこのおばさんは日本語を喋っているんだ? まあいいや。言葉が同じなら苦労もしないし。
「すいません。少し質問したいことがあるんですけど、よろしいですか?」
「何? なんでも聞いて」
やはり、街中を歩いているおばさんは大体優しいな。まだ、この人としか喋ったことないけど。
「この国のお金の単位って何ですか?」
「あら、あなた違う国の人?」
「ええ。かなり遠いところにある国から来たんですけど、自分の国のお金しか持ってなくて」
「そうよね。このあたりの国はお金の単位が統一されてるからね」
いい情報を貰った。つまり、そのお金を持てばどこに行っても使えるということだ。
「それで、質問の答えなんだけど、リリーよ」
リリーとはユリのこと。何か関係があるのだろうか。
「ありがとうございました」
「あ、ちょっと待って」
俺がお礼を言って立ち去ろうとしたら、おばさんに呼び止められた。
「何ですか?」
「あなた、この街にきたってことは冒険者を目指してるの?」
冒険者だと……。ついに夢が叶うのか。ああ神よ! ありがとうございます!
「はい」
しかし、俺は喜びを顔に出さない。あくまでもクールを装う。
「それなら、このお金を持っていきなさい」
「いいんですか?」
「いいのよ。だってこの国のお金を持ってないでしょ。お金が無いと何もできないわよ」
何ていいおばさんなんだ。
「ありがとうございます!」
こうして、俺はこの街の冒険者ギルドへ向かった。
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