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1-7.

続かないかもしれません。

 高祖母達との話し合いが終わった後、私を連れた両親はそのまま件のたてものを辞去する事になったのだが……。

 受け取った一覧からどの教育機関を選ぶのかは、良く考えて結果をまた後日知らせてくれれば良い、との事だったのだが、帰りの車中にて早くも両親は相談に熱を入れ始めてしまった。 


「ねえ、義仁よしひとさん、どうしたらいいのかしら」

「うーん。何と言っても義曾祖父ひいおじい様の遺された願いだからね。それに、花恵はなえちゃんにとっても悪くないお話だよね」

「そうよね。曾祖父ひいおじい様も曾祖母ひいおばあ様も本当に色々と良くして下さって。ああ、ほら。あの時だって……」


 いやまあ色々とお世話になっているらしい高祖父の遺言に従うのが確定事項なのは仕方ないとして、途中からは専ら高祖父夫妻にどのような恩義を受けたのかを挙げ合っている訳ですよ。

 現状の保育園児という立場では、両親の話が理解出来ているという素振りを見せるのも躊躇われるので、父の声が弾んでいるように聞こえる時や、母がおそらく私をあやす為だろうけど「ねえ、花恵ちゃん?」などと笑顔で構ってくる時に、出来るだけ幼児らしくはしゃいで見せたり、意味もなく窓の外の風景を見つめたり位しか出来ず、非常にしんどい。

 とはいえ、高祖母とのお話し合いと、それに続くこの相談のおかげで、両親の立ち位置というか社会的地位について朧気にではあるが多少知る事が出来たのは僥倖と言って良いだろう。

 まず本家と言い慣わされていた高祖母の家だが、高円たかまどか家という由緒ある結構な家柄であるらしい。かなり上位の社会的地位がある上に裕福でもあるようで、「○○さんが助けていただいたらしい」という事柄に端を発して、△△さんも□□さんもと幾つもの名前が挙がっていた。

 先ほどまで居たあのたてものも高円家の持ち家の一つなのだろう。寝ている間に連れ込まれたのならば、家の記憶が無かったのも頷ける。とすれば私が寝ていた部屋は客間の類いか。客間にしてはクローゼットの衣服が充実していたのが謎だけど。

 前世の記憶で云うと、後に財閥へと移行した旧華族とかそんな感じの歴史ある家なのだろうな。高司家ならともかく高円家という名前に欠片も聞き覚えが無いのが気にかかるけれど、一般庶民のアラサー男という立場で上流階級の家柄に詳しかった筈も無く、今は「そうなんだな」と曖昧に飲み込んでおくしかない。

 次に両親、というか高峯たかみね家の立ち位置だが、高円家の分家筋というか傍流と思われる。

 おねえさんとかおじさまとか耳で聞いているだけなので、「義」が付くのかどうかとか伯父なのか叔父なのかはたまた小父なのかなどの、「書き物であれば容易に推測できる」であろう家系的な繋がりはさっぱりだし、気になってはいたが後回しにしていた祖父母についても何も分からなかったが、それでも一族の枝葉の多さと付随する複雑なしがらみの複雑さは容易に推測出来た。

 それにしてもこの両親、少々持っている情報が多すぎでは無いだろうか。それともある程度以上の階級の家柄ではこれが普通なのだろうか。

 馴染めそうにないが、それでも馴染まなくてはいけないんだろうな。ああ、無情だ。

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