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続かないかもしれません。
私の頭の中に前世の記憶が溢れたあの日から半年と少しが経ち、自分自身についてや周囲を取り巻く環境、親を含めた家族関係も多少は把握出来てきたので、今後の振る舞いの方向付けの為に少しばかり整理しておくことにしよう。
今生の私は高峯家の一人娘で名前は花恵。保育園に通園している四歳児だ。
父は義仁で母は裕美。名刺を見る機会があったので父が会社勤めをしている事は確定だけれど、普段家に居る母については専業主婦なのか在宅ワークなのかハッキリしていない。パソコンに向かって難しい顔をしている事があるので、後者の可能性が高そうではある。
同居家族は以上で、前世の記憶が溢れる前も含めて父方も母方も祖父母には会った記憶が無い。尋ねる機会が無かった為、存命なのかどうかも含めて情報無し。
居宅は庭付き二階建ての一戸建てで、立地は同様な戸建てやタウンハウスが立ち並ぶ住宅街。故に「それなりに裕福な家庭」だと思っていたところ、高祖父の葬儀とその遺言の開示に因んで、高円家という「非常に裕福な一族」に連なる家柄だという事が分かった。
なお高円家の現当主……というか現最高権力者は亡くなった高祖父の妻──つまり高祖母である高円美弥乃らしい。
この高円家だが、由緒ある教育機関多数に出資もしくは後援をしているようで、高祖父の遺言には曾孫世代以降十四才未満をそれらの教育機関に通わせる事が含まれていた。
四歳児である私も当然対象に含まれていた為、両親の話し合いの結果、私は聖バルバラ女学院という一貫校の幼稚舎(=幼稚園。就学前教育施設)を受験する事になり、受験の仕方こそ異例だったものの、先日無事に合格の通知を受け取った。
余談になるが、前世では保育園に通園しなかったので知らなかったが、保育園と幼稚園(就学前教育施設)は設立目的が異なる為に通園年齢層に重複があり、両者ともに満五歳になる年度一杯まで通園出来るそうだ。また、小学校についても必ずしも入学条件に幼稚園卒園が含まれる訳ではないので、保育園卒園者、幼稚園卒園者、卒園履歴無しの三者が等分に通うという、派閥争いが起きそうな小学校も地域によってはあるらしい。
保育園繋がりの話として、同じ保育園に通園しているお友達の幾人かに聖バルバラを受験する事を話していたのだが、その内の二人
……青天目瑞月ちゃんと勅使河原小都子ちゃんが、同じく聖バルバラを受験する事になって見事合格した。
親が主対象の面談や通園に過不足無いかを測る事が主目的の運動能力検査は置いておくとしても、発想力や創造力を試す筆記試験はそれなり以上に難易度が高かった筈なのだけれど、二人曰く「クイズみたいで面白かった」そうだ。前世の私の四歳当時とは地頭の出来が相当に違うのだろう、と悲しくなったのは勿論私だけの秘密だ。うん。
そんな二人だが、制服を私と同じ洋装店「Signorina」で手配する事になった。
難関校である聖バルバラに合格出来たご褒美の一つとして最良の制服を用意してあげたいが、生地や型が同じでも仕上がりには技術力や慣れの違いが顕著に出るからお薦めのお店を紹介して貰えないか、とOGである母に相談してきたので、それならばと私と合わせて「Signorina」にお願いしたのだ。
店主の遠藤さんが快諾してくれて本当に良かった。
最後に、これは両親も吃驚した事なのだが、高峯家に本家から侍女さんがやってくる事になった。
高祖父の遺言の対象者が娘である家について、家庭内での淑女教育の充実の為に本家から侍女を派遣する、と高祖母が決めてしまったのだそうだ。
正直に言って、阿呆かと思ってしまった。
高祖父の遺言そのものが過保護なのに更に上乗せかと。どう考えてもやり過ぎだろうと。逆らう理由もないので両親はあっさり了承していたけれどね。
聖バルバラのお受験の時に会った侍女さんは、非の打ち所の無い侍女ぶりだった。高嶺の花を目指さねばならない私にとっては、格好の教師にも絶好の見本にもなってくれるだろうと思う。
侍女さんが来るのは来年二月から。自分磨きに勤しみつつその日を待つとしよう。




