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第一幕 はじめての野営です!

まだ日が昇りきらぬ早朝の外門前、そこに金獅子の姿が見える。

「いやはや!年若い身でありながら全員がBランクとは!これで此度の安全は約束されましたな!」

「なーんか、勢いで振り切ろう感バリバリだよねー…」

ヨウコのジト目に聴こえぬふりをしながらも冷や汗を垂らす商人達、顔を見るなり、小娘4人…?ギルドはドトール商会を舐めているのか…?等とぶちかましたあとにギルドカードを見せられたのである。

「では、出発しましょうか」

スバルがそう言うと商人達は一目散に馬車に乗り込む、彼女たちの機嫌を損ねて契約破棄と言い出されては堪らない。

「開門!」

衛兵の声で外門が開かれた。

3台立ての馬車がすべて門を通過するとゆっくりと閉じられた、開け放つには少しばかり時間が早いのだろう。

何はともあれ旅が始まるのである。

最初の村彼方に見えるまで1日半、大きな問題は無かった…と言いたいのではあるが…

「コヨリ殿!歩き疲れたでしょう?馬車に乗られては如何ですか?喉は乾いておりませんか?お菓子などお食べになりませんか?!」

「いえ…私は問題ありませんから…お構いなく…」

昨晩の野営でポシェットからあり得ざる物が出るわ出るわしたのを見て、商人達は目をギラつかせていた。

昨夜の様子はこうだ。

「この辺りで今日は野営と致しましょう」

そう言って馬車を停めると、商人達は毛布や携行食の準備を始めた。

それを確認し、こより達も支度を開始する、テントセット、鍋、フライパン、包丁、まな板、豚肉のブロック、米の袋、様々な野菜、香辛料、調味料、水桶が次々と取り出される、身長138センチの子供が肩から提げたポシェットから、である。

その時点で商人達の目が点になっていたのだが、テントを張り終えた三人娘が更にとんでもないことを言い始めた。

「よりちゃーん、ポシェット貸してー、ベッドも出さないといけないから」

「ついでですし着替えも出しましょう」

「今日は寒いから、暖房も出して良いですか?こより先生」

「はい、良いですよ、じゃあ私はお料理始めますから、テントの内装なんかを適当にお願いしますね」

気軽にポシェットを渡す、その光景に商人達は泡を吹いて気絶した。

鞄の容量を増やす魔法は旅慣れた冒険者なら少なくない割合で習得している、しかしそれはせいぜいが、毛布が二枚余分に入る、と言った程度の物なのだ。

「こより先生!今日のご飯は何を作ってくれるんですか?」

「そうですねー…ポークソテーにマッシュポテト、野菜とキノコのクリームスープとピクルスなんてどうですか?」

「イイね!よりちゃんの料理は間違いないし、出来上がるのが待ちきれないよー!」

「部長、子供じゃないんですからお箸を振り回さないで下さい」

姦しい金獅子であった。

口から魂を吐いていた商人達にも料理が振る舞われた。

ジュージューと音を立てる鉄板には表面をこんがりと焼き上げた豚肉とマッシュポテトが、贅沢品である胡椒がふんだんに使われ香ばしい香りを引き立てている。

スープカップには旨味のために入れられたベーコンと大きめにカットされた根菜をはじめとした野菜。

小皿の中にはパプリカとタマネギのピクルス。

この国では貴重な東方からの交易品の白米。

商人達の手元にはナイフとフォークが用意された。

「おお!美味しいっ!いやー、久しぶりにお米のご飯が食べられて嬉しいよ!」

ウンウンと頷く金獅子。

王都の高級店でしか食べられないライスを一口…商人達が目を見張る、高級店など足元にも及ばぬ噛むたびにあふれる甘み。

そしておかずに手を伸ばし絶句する、ソースなどなくても素材を活かしたこよりの料理は今まで食したどの料理よりも美味だった。

スープはと言えばこれもまたこの世界では考えられぬ料理で、ミルクで煮込んだ具材は口の中でふわりと溶けて優しい甘みと程よい塩味の絶品である。

「あ、ポークソテーにはレモンをかけても美味しいですよ!」

言われるがままにカットされたレモンを絞る、頬張る、再び絶句。

それを見たこよりが嬉しそうに笑みを浮かべる、その顔を微笑みながら見つめる三人娘であった。

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