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第一幕 出発前日です!1

初陣から1ヶ月、勇者パーティーは未だ王都に滞在していた、討伐依頼なども着実にこなし、必要な物資を揃えた一行は明日王都を立つ。

「え〜!こよりちゃん達たびに出ちゃうの〜?」

すっかり仲良くなった宿屋【勇者の眠り亭】の看板娘、シャロンちゃんが頬をふくらませる、こよりと同い年の彼女はせっかくできたお友達が旅立つのが不満らしい。

「確かに残念だねぇ…せっかく娘が増えたのに…でも仕方ないさ、金獅子の実力なら何時までも王都に居ても退屈だろ?」

女将の言う通り、王都近郊では余り強力なモンスターは出ない。

「シャロンちゃん、女将さん、お世話になりました!出発は明日ですけどお礼を言わせてください」

「はいよ、こっちこそ今までの宿泊ありがとうね、今日はギルドに顔を出すんだろ?」

「はい、マルセラさんや冒険者の皆さんにも挨拶に行かないと」

最初の何日かこそ喧嘩腰な冒険者が居たものの、既にこの街の冒険者ギルドでは知らぬ者のない名物パーティーであった。

明るく快活なヨウコ、物静かで際立った美人のスバル、怒らせると恐ろしいが可愛らしいミスズ、愛くるしい幼女でありながら頭抜けた戦闘力のこより、誰が呼んだか、パーティー金獅子は人気者なのだ。

宿から200メートルほど歩きギルドに入る。

「いらっしゃい!明日はついに金獅子の晴れの門出ね、寂しくなるけど頑張りなさいよ!」

「金獅子が旅に出ちまうと俺達の仕事が増えちまうな、あと、華が無くなる!」

男衆が一斉にウンウンと頭を振る。

「えへへ、ありがとうございます、今日は明日の護衛依頼の詳細確認とギルドカードの受け取りに来ました」

ギルドカード、冒険者としての評価と通行手形の合わさったこの世界の身分証明書である。

スクロールと同じくこれもまた魔法道具であり、実力に見合ったランクが逐一更新される。

王都近郊の仕事を受けるのに必要なランクは最高でもC、薬草採取などの簡単な仕事でEである、E.D.C.B.A.Sと順に上がってゆく。

「そうだったわね、はい、これがギルドカードよ、無くさないように」

金獅子の各員にカードが手渡される、全員Bランクの表示だ。

「流石だな!Bランクなんて久しぶりに見たぜ!」

そうなのだ、小説などでは往々にして王都の冒険者は精強であるが、実際にはあり得ない、危険の少ない地域でなければ安心して王都など構えられる訳がなく、その都市に根付いた冒険者が腕を上げる機会などそうそうない、必然冒険者の平均レベルは低くなる。

「この辺りは滅多に見かけないけど、盗賊なんかも居るし辺境に行けば強力なモンスターも出るでしょうから、くれぐれも気をつけるのよ?」

「「「「はい!」」」」

金獅子が声を揃える。

「餞別としちゃあ少ないが、俺達皆で金出して買っといたんだ、これを持っていきな!」

そう言って冒険者の一人が大きめの袋を渡す、そこには高価ではないが決して安くはない回復液がいっぱいに入っていた。

「うわぁー!皆さんありがとうございます、帰ってきたら食事をご一緒しましょうね!」

「そいつぁイイや!別嬪さんとメシが食えるならプレゼントの甲斐もあったってもんだ!」

辺りから歓声が湧き起こる、気の良い男達であった。

「さてさて、明日の依頼の詳細はこの紙に書いてあるから、よく目を通しておいてね」

手渡された依頼書を4人で確認する、商隊の護衛依頼である。

朝のうちに王都を出発し、小さな村をいくつか経由して国境の町までの10日ほどの旅程であった、依頼人はドトール商会とある。

ドトール…コーヒー…甘いお菓子…

金獅子の午後の予定が決まった瞬間である。

商店区画から王宮側へ3分程入ると飲食店が建ち並ぶ区画である、そのうちの小さな喫茶店に入ると香ばしいコーヒーと甘い香りが金獅子を迎えた。

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